理事ノート(2006年3月29日)

理事ノート(2006年3月29日)

本間 政雄

長い間ありがとうございました!

この度、3月31日付で京都大学理事・副学長を退任することになりました。2001年1月に事務局長として赴任し、法人化に伴い2004年4月からは理事・副学長(総務・人事・広報担当)として、さらに2005年10月からは非常勤理事・副学長(事務改革・社会連携・渉外(東京)担当)として合計5年3ヶ月の京大勤務でした。

この間、国立大学は大学の内と外から大きな変革の波に洗われました。国立大学の法人化はこれら変革のひとつに過ぎず、社会、経済、行財政全般にわたる様々な変化、例えば高度情報化、国際的な経済競争の激化、少子高齢化、地球規模の解決を要する課題の悪化、規制緩和や地方分権化や、学術研究の急速な高度化、複雑化、学際化、大型化といった変化にも大学のあり方に大きな影響を与えています。

私が京大に赴任してきた2001年はまさにこのような変化が顕在化、深刻化する21世紀の幕開け時にあたっており、事務局長、理事としてこのような変化に的確に対応するだけでなく、それらを先取りする改革を先導し、着実に実行することこそが自らの役割と考え、そのように仕事をしてきました。

思い起こせば、京大赴任後3日目に米国カリフォルニア州サンノゼで開催された第1回京大海外フォーラムの席で長尾真総長(当時)に初めてお会いし、「東京や首都圏での京大の存在感は希薄です。是非東京に京大オフィスを設けて、政治・経済・行政関係の諸機関や在外公館との連携を強化しましょう」と提案したのが、私なりに腐心してきた諸改革の始まりであり、その後総長補佐体制の確立、委任経理金に対する2%の課金と「全学共通経費」の設置、桂キャンパスの全体計画の認定と建設の着手、(株)ロームによる産学連携施設の寄付の獲得、留学生の交流の場としての「き・ず・な」の設置、国内外向けの広報誌の刊行、「オープン・キャンパス」の開始と「キャリア・サポート・センター」の設置などについてイニシアティブを取ってまいりました。

法人化に向けて学内に設けられた「京大の将来像」「組織・管理運営」「職員人事制度」「財務・会計」「全学機構」「附属病院」についての6つのWGのすべての委員となり、国立大学法人法の立法準備作業を横目で見ながら法人化後の京大のあり方を部局長などと議論したこと、毎週定例の総長補佐会で原案作りに関わったことも色々な意味で印象に残りました。時に部局長と考え方が対立し、激しい議論になったことも一度や二度ではありませんでした。結果から見ると、法人化が目指した機動的で戦略的な大学運営、効率的な大学運営など必ずしも有効に機能していない部分もありますが、一方で教育研究上、管理運営上のニーズにより即した教職員制度や事務組織の改革、戦略的な資源配分など一定の成果を挙げつつある部分も少なくありません。

法人化後は、総務・人事(労務を含む)・広報担当に加えて、総長特命により事務総合調整、事務改革、電子事務局、リスク対応、渉外(寄付金制度)、全学同窓会などを担当しました。担当事項のどれ一つとっても気の抜けない、しかも創造性が求められる仕事ばかりであり、正直一人の人間の両手に余る責任を背負い込んだと後悔したこともあります。しかし、こうして理事としての2年の仕事を振り返ってみると、試行錯誤ながら何とか責任を果たせたのではないかと思います。職員人事制度の改革、職員採用の革新、新たな職員能力開発制度の確立、過半数代表者や職員組合との良好で率直にものが言える労使関係の確立、社会的説明責任をよりよく果たす観点からの情報発信の充実、京大で起きた様々なトラブル、事件への機敏で的確な対応、京都大学アカデミックパートナーズ・プログラム(KAP)、京大基金など新たな寄付スキームの検討・実施、旅費規程の簡素化に代表される約90項目に及ぶ事務の簡素化・合理化の検討・実施、組織のスリム化と意思決定の迅速化、事務効率の向上、顧客サービスの向上を目指す事務改革の立案・実施、電子事務局の推進など程度の差はあっても確実に前進したと自負しています。

この他、国立大学協会近畿ブロックの取りまとめ役として、法人化後の職員採用試験、幹部職員の登用、研修事業の立案や、国大協研修企画小委員長として、国立大学のトップ、ミドル・マネジメントの研修事業の立案・実施に深く関わりました。国立大学を取り巻く課題の多さ、困難さを思うと、学長や役員、彼らを支える部課長などの幹部職員、教育研究、医療の最前線で実務に携わる一般職員の能力、専門性の向上は喫緊、最重要の課題の一つです。この点、京大理事としての仕事ではありませんが、昨年4月に国立大学幹部有志で「国立大学マネジメント研究会」(ANUM)を設立し、7月から大学経営の革新事例や論稿を集めた月刊誌「国立大学マネジメント」を刊行したことは、この課題に関する私なりの貢献です。ちなみに、ANUMは発足9ヶ月で正会員400名、賛助会員26法人に達し、九州地域交流会(今年1月)や「サロン」をスタートさせています。若手職員を含め、関係者の積極的な参加をお願いしたいと思います。

なお、私は昨年10月に(独)大学評価・学位授与機構教授、国際連携センター長に就任していますので、京大非常勤理事の職が解かれる4月以降は大学評価、高等教育の質保証、大学政策全般に関わる国際的動向の調査・分析、海外の評価機関との協力連携、わが国の評価に関する情報発信といったセンターの仕事に尽力したいと考えています。

終わりに、私のような浅学菲才のものに大きな責任を与えていただき、またのびのびと仕事をさせていただいた京都大学と長尾真前総長、尾池和夫現総長はじめ教育研究、医療、管理運営の現場で日々努力されている全教職員の方々、学外から京都大学を応援していただいた京都大学教育研究振興財団、京都府、京都市、大学コンソーシアム京都、メディアの方々などすべての方に心からお礼を申し上げたいと思います。「事務局長ノート」「理事ノート」を長い間読んでいただき、本当にありがとうございました。

なお、4月からの連絡先は、大学評価・学位授与機構(郵便番号187-8587小平市学園西町1-29-1、電話:042-353-1666、[竹橋オフィス:千代田区一ツ橋2-1-2学術総合センター1109号室]、t-aml*niad.ac.jp(「*」を「@」に変えてください))となります。

2006年3月29日