理事ノート(2005年1月19日)

理事ノート(2005年1月19日)

本間 政雄

1. 「事務改革担当」理事へ

昨年10月から、事務改革担当の非常勤理事として新たなスタートを切りました。総務、人事・労務、広報、事務総合調整、リスク管理・リスク対応など幅の広い、しかも一瞬も気が抜けない仕事は、後任の木谷雅人理事に託すことができたので、精神的にも身体的にもとても楽になりました。

とはいうものの、「事務改革」の対象範囲は、(1)事務の簡素化・合理化、(2)事務組織の再編成・事務組織の構造改革(フラット化、グループ化)、(3)事務職員の再配置と多岐にまたがっており、また人事制度とも密接に関わっているため、一朝一夕には進みません。

さらに、現在の事務組織や仕事の仕方というものは、百年以上かけて国家公務員、行政組織という枠の中で出来上がってきたものであり、あちこちの手直し程度の「改善」はできても、組織や仕事の仕方を根本から変えることは容易ではありません。

また、大学は企業と違って教育研究、高度医療を標榜する組織体であり、それらを担う教員をはじめ、技術職員や医療職員など専門性の高い多様な職種の人々が働く組織であり、また教員には伝統的に学問の自由、部局自治が認められてきたこともあり、企業のように経営トップの命令一下全員が従うというようにはできていません。事務改革、組織改革には教員の理解と協力が欠かせないだけに、教員サイドに粘り強く説明し、理解を得るよう務めてきました。事務や技術に携わる職員についても、上からの一方的な命令や指示によるのではなく、各人が改革の意味を真に理解し、自発的な取り組みが生まれることを理想としています。

2. 「4位一体」改革

ということで、改革にはとにかく時間がかかります。しかし、事務改革なしに京都大学を取り巻く厳しい財政状況・経営環境の下で、大学を発展させていくことはできません。京都大学では、A人事制度改革(一人ひとりの能力、意欲、専門性を向上)、B事務の簡素化・合理化(事務処理を迅速化、効率化)、C事務組織の再編成、D事務職員の再配置の4点を事務改革の基本コンセプトと位置づけ、「限られた数の職員で(1)効果的な教育、研究、医療支援、(2)顧客サービス、満足度の向上、(3)効率的な大学経営を実現」することをめざします。

2004年11月に「事務改革推進室」を発足させてから既に1年以上、2005年5月に「事務改革大綱」を役員会で決定し、基本的な考え方や改革の方向を示すとともに、「電子事務局」関連を含む91項目の簡素化・合理化項目を実施期限を付して示しています。それらの一部は既に実施に移され、一定の効果を上げているものもあります。一方で、旅費規則の大幅な簡素化、旅費計算・切符の発券・旅費支給の集約化のように合理化効果はきわめて大きいものの(全学で6万件の国内出張、5千件近い国外出張、総経費30億円)、いまだ検討中の事項もあります。

意思決定ラインの短縮化を目指す「フラット化」、流動的な組織編制を可能にし、従来の「掛」による縦割り型の業務執行から、2掛程度を統合した「グループ」による柔軟な業務執行を目指す「グループ化」もこの1月から、本部の3課で試行が始まりますが、まだまだこれら組織改革の意義は十分浸透していない状況です。

また、昨年11月に、従来の「事務本部」を、それぞれのミッションに応じて「教育研究推進本部」と「経営企画本部」に分割しました。その上で、今年4月をめどに両本部の業務のうち専門的あるいは定型的な業務を独立させて「センター」を合計12設置することにしています。「給与・共済事務センター」「学生サポートセンター」、附属病院の「外来事務センター」「診療報酬事務センター」などがその例です。「センター」は、ミッションとされた業務を、顧客サービスの向上を図りつつ、効率的・効果的に執行するための方策を考え、具体的に実施に移していくことが設置の狙いです。そのため、いわゆる通常の事務組織以上に柔軟な組織編制をとることにしていますし、センター長やセンター職員は、やる気のある適任者を幅広く求めていくことにしたいと考えています。

教育研究推進本部と経営企画本部は、戦略性の高い企画立案業務や調査分析業務を中心に再編成します。例えば、現在、財務、契約、出納、資産管理の4課で構成されている財務部は、「財務企画」と「財務戦略・分析」という2課に再編する案が検討されています。戦略性の高い企画立案、調査分析業務を本部に集中・特化することにより、これまで相対的に弱体であったこれらの機能の強化を図ることができるようになります。

この他、昨年6月に実施した部局ごとの業務量調査をもとに、部局ごとの特殊事情を加味しながら、限られた数の事務職員を、繁忙部局や大学としての重要分野に再配置していくことを1月はじめに決めました。2006年度から4年間かけて計60名の事務職員を再配置することになります。

4月の実施に向けて、関係者の理解と協力を得ながらさらに改革のスピードを上げていきたいと思います。

2005年1月19日