1. 柔軟かつダイナミックな体制による知の創造
  2. 高度で多様な頭脳循環の形成
  3. 新たな社会貢献を目指して
  4. 世界に伍する京大流大学運営

1. 柔軟かつダイナミックな体制による知の創造

研究力強化/国際協働 最先端研究の推進 再生医療と先端医学研究
  1. iPS細胞の早期実用化に向けては、(1)iPS細胞研究中核拠点、(2)疾患・組織別実用化研究拠点(拠点A/拠点B)、(3)技術開発個別課題、(4)再生医療の実現化ハイウエイの年度計画を着実に実施し、再生医療の実現化を推進している。特に、iPS細胞研究中核拠点については、 平成30年4月 平成31年3月に末梢血由来 平成31年2月には臍帯血由来の新たな臨床用iPS細胞ストックの提供を開始した。 また、平成30年8月に iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いた医師主導治験を開始 し、同年9月にはiPS細胞由来血小板による臨床研究について厚生労働省の承認を得た。さらに、平成30年11月にヒトiPS細胞からがん免疫療法の効果を高める 再生キラーT細胞の作成 、平成31年3月に ゲノム編集技術を用いて拒絶反応のリスクが少ないiPS細胞の作成 同月に筋委縮性側索硬化症(ALS)を対象とした医師主導治験を開始した。 加えて、大阪大学をはじめ、他大学の研究にも積極的に協力し、他大学においても心筋シートを移植する臨床研究、脊髄損傷を治療する臨床研究計画が承認されるなど再生医療の実現に向けて着実に進展している。
  2. 本学発の基礎がん免疫学研究の成果は、近年世界を席巻するがん治療のパラダイムシフトをもたらし、 本庶佑 高等研究院副院長・特別教授が免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見によりノーベル生理学・医学賞を受賞 した。
化学と生命科学の融合( iCeMS 研究拠点(WPIアカデミー拠点 iCeMS )及び連携研究拠点等において、次のような国際的な最先端研究を展開した。
高等研究院 世界トップレベル研究拠点プログラム を実施し、多分野融合研究によりヒトの設計原理を解明して新しい生命科学及び医学の基盤を形成することを目的とし、 「ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)」 を研究拠点として新たに設置した(平成30年10月)。
高等研究院 に、研究拠点を設置し、国際的な最先端研究を展開するとともに、これまでの取組状況について検証する。また、iPS細胞及びiPS細胞技術を利用する医療・創薬の早期実用化に向けた研究を推進するとともに、iPS細胞研究の裾野拡大を図ることを目的に、研究者・技術者を育成し、iPS細胞技術を普及させる。
On-site Laboratory On-site Laboratory 事業に関し、学内での議論を踏まえて平成30年12月に制度化し、同月に学内公募、審査を経て「IFOM-KU国際共同ラボ」「京都大学サンディエゴ研究施設」「スマート材料研究センター」「京都大学-清華大学環境技術共同研究・教育センター」「Mahidol環境学教育・研究拠点」の 5件をOn-site Laboratoryとして認定 するとともに、平成31年2月にOn-site Laboratoryの運営支援にあたる対応窓口を 国際戦略本部 に設置し、関係部局からキックオフ・シンポジウム開催にかかる学内連携の方策、現地運営にかかる照会等を受け、円滑な運営にかかる支援を開始した。今後、海外機関等と活発な研究交流を行い、世界をリードする最先端研究を推進するとともに、優秀な外国人留学生の獲得、産業界との連携の強化等、大学への波及効果が見込める様々な取組の実現を目指す。

2. 高度で多様な頭脳循環の形成

人材獲得 ・育成/国際化 若手研究者 白眉プロジェクト 白眉プロジェクト の構成を見直し、従前の白眉プロジェクトを踏襲した【グローバル型】に加え、 文部科学省「卓越研究員事業」 を活用した【部局連携型(テニュアトラック型)】による募集を平成28年度から新たに行い、テニュアトラック制による若手研究者採用のスキームを確立した。平成30年度は、【グローバル型】については、362名の応募(うち海外から98名)があり、13名(准教授7名(うち海外から2名)、助教6名(うち海外から0名))の採用を決定した。また、【部局連携型(テニュアトラック型)】については、本学から4ポストを提示し、1名(助教1名)を採用した。
同プロジェクトの研究者は、本学の独創的かつ最先端の学術研究を基礎とする研究環境で自由闊達で独創的な発想に基づく挑戦的な課題研究に取り組むことにより、科学研究費補助金若手研究(A)の採択率が全国平均に比べ高く、論文等の研究成果においても、Elsevier社が「異分野の研究機関の発表論文の質を公平に比較する」目的から新たに考案した指標Field Weighted Citation Impact(FWCI)では、平均1.43(2017年)となるなど成果面でも高い実績を誇っている。
同プロジェクトの平成30年度修了者の46%が内外の大学や研究機関でテニュアやテニュア・トラックのポストに就いており、本学から国内外に優秀な若手研究者を輩出することに貢献している。
研究者採用累計数:154名
優秀な若手教員獲得・育成 若手教員ポストの拡充の取組の一つであり、本学における適正な教員年齢構成の実現を目指す優れた取組への支援策である若手重点戦略定員事業に関し、平成30年度中に制度設計を終え、学内公募、審査を経て、平成31年3月に平成31年4月1日付け40名分の定員の措置を決定した。本定員の活用にあたっては、ポイント制の考え方を導入するなど、各部局において、他の財源等と組み合わせることによる教員の柔軟な雇用を可能としており、今後、40名を超えるより多くの若手教員の雇用を見込んでいる。若手教員ポストの拡充については、当初第3期中期目標期間内に制度設計を行い、第4期中期目標期間中に定員内若手教員割合を増加させることを目標としていたが、若手重点戦略定員事業の開始により、当初想定していたよりも前倒しで計画が進捗している。
なお、本学は指定国立大学法人構想で第4期中期目標期間内に定員内若手教員比率を30% に引き上げることを目標としているが、平成30年度末時点の若手教員比率は約18%に留まっている。引き続き、若手重点戦略定員事業等を活用し、若手教員の雇用拡大を図っていく。
学生
吉田カレッジ( Kyoto University International Undergraduate Program(Kyoto iUP) ASEAN6カ国(タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン)をはじめ、台湾、香港、シンガポールへもリクルーティングチームを派遣。高校、大学、教育行政機関、大使館、同窓会などを訪問し関係構築に向けた取組を進めた。特に高校はトップレベルの計44校(9ヶ国)を訪問し、個別説明会、合同留学フェアなどにより Kyoto iUP の広報活動を着実に推進した。また、インドネシア、フィリピンに続き、タイの高校2校とも招聘プログラムを実施(11月3日~9日)するなど、双方向のネットワークが強化されるとともに、 Kyoto iUP の認知・関心が確実に高まった。
本学OBを多数輩出し歴史的な繋がりが深く、現地同窓会(台湾京都大学同窓会)の積極的な後押しを得られる台湾については、10月13日~19日まで"7 Days in Taiwan"を実施し、総長、理事、副学長など35名の教職員が参加して留学フェアや台北、台中、台南、高雄のトップ10校への訪問・説明会などを行い、留学フェアは110名、高校訪問は合計約350名と多数の参加者を得ることができた。
上記のとおり広報活動を積極的に行ったことにより、第3期(平成30年度に選抜)の志願者数は228名となり、第2期(平成29年度に選抜、平成30年10月から本学にて予備教育実施)の志願者数33名から大幅に増加した。
卓越大学院プログラム 平成30年10月に 卓越大学院プログラム として 「先端光・電子デバイス創成学」 が採択された。同プログラムでは、光・電子デバイス分野を中心とし、その基礎物理・理論の深化からシステム・情報の制御・応用にまたがる融合・垂直統合型の教育を推進することを目的にしている。また、我が国を代表する民間企業、最高水準の研究力を有する国公立研究所、トップクラスの海外有力大学との連携や、グローバルスタンダードでの教育と質保証を組織的に実施し、平成31年4月から学生を受け入れ、先端光・電子デバイス学を創成する国際的な知のプロフェッショナルを、5年一貫の博士課程学位プログラムにより育成することを目指す(平成31年4月19名受入)。
大学院共通・横断教育基盤 平成30年度から 国際高等教育院 において、大学院学生を対象に、専門以外に素養として備えておくべき知識・技能の教授を目的として、 大学院共通科目群及び大学院横断教育科目群 を開講した。
大学院共通科目群 は、大学院レベルの全学共通的な教育を充実させるため、専門学術以外にも素養として備えておくべき共通基盤科目として、社会適合分野8科目、情報テクノサイエンス分野6科目及びコミュニケーション分野17科目を開講し、計697名の大学院生が履修した。
大学院横断教育科目群 は、各研究科が開講する大学院科目のうち、 博士課程教育リーディングプログラム を踏まえて設計されたものを含め、他研究科学生の履修にも配慮した横断的な科目を本群科目として89科目開講し、353名の大学院生が履修した。
また、教養・共通教育から学部・大学院の専門教育までを通じた情報・統計・数理の全学的教育基盤を整備するために国際高等教育院に設置した附属 データ科学イノベーション教育研究センター が中心となり、研究科の協力のもと、教養・共通教育ではデータ科学分野で13科目(うち4科目は日本語授業に対応する英語授業)開講し、1,903名の履修登録者があった。また大学院共通・横断教育として5科目開講し、107名の履修登録者があった。
次年度開講に向けた活動として、平成30年度の履修状況やアンケート回答状況等を踏まえ、国際高等教育院大学院共通・横断教育基盤各分野別部会において検証を行い、基本的に平成30年度と同様の方針で実施することとしたが、大学院共通科目「研究倫理・研究公正」について、平成30年8月に研究公正委員会において『研究公正推進アクションプラン』が改正され、「研究倫理・研究公正」を修了している場合対面チュートリアルを免除することとなったことを踏まえ、履修者増に対応するべく実施方法等検討を行い、グループワークの日数を増やすなどで対応することとした。また、データ科学関係においては、特に大学院共通科目群の科目を拡充することとした(3科目)。
GSTセンター 大学院生の教育研究能力向上のための研修を行う、GSTセンター(仮称)の設置に向けて、戦略調整会議の下に設置したGSTセンター小委員会において、大学院生の教育活動への活用についての検討を行った(平成30年5月24日)。これを受けて、教育制度委員会と連携して、TA経験者、教員、部局長を対象として本学のTA制度の運用状況及びTA研修の実施状況に関するアンケート調査を実施した。アンケート調査結果からは、分野を問わず教育に携わる者に求められる基礎的な知識に関する研修に対するニーズが確認できたことから、引き続き、GSTセンター及び同センターにおいて実施するトレーニングプログラムの設計に係る検討を進めた(平成31年3月14日)。
留学生リクルーティングオフィス 留学生リクルーティングオフィス(仮称)の設置に向けて、戦略調整会議の下に設置した留学生リクルーティングオフィス小委員会において、外国人留学生の獲得に向けた全学的支援サービスに関する調査を行い、その備えるべき機能を確認し、オフィスの制度設計を行った(平成30年11月21日)。その結果、平成31年4月に 国際戦略本部 の下に「国際アドミッション支援オフィス」を設置した。また、国際戦略本部においてリクルーティング戦略を立案した上で、外国人留学生誘致等の体制・機能の整備を引き続き進めることとなった。
大学院生・留学生への施策
  1. 学生への経済支援の強化を進めるため、本学独自の給付型奨学金制度を含め、以下の取組等を行った。
    (1)平成28年度に創設した 「京都大学基金 企業寄附奨学金(CES)」 により、継続した民間資金の獲得が行えるようになったことから、平成29年度は、800万円の寄附を獲得し、奨学生21名へ支給した。平成30年度においても、さらなる企業からの寄附を獲得するためホームページ等にて広報を行い、新規企業も加わり1,300万円の寄附を獲得し、32名の奨学生に支給した。
    (2)平成29年度に修学支援基金で獲得した寄附金を活用して創設した 「京都大学修学支援基金給付奨学金」 について、平成30年度は20名の奨学生を採用し、240万円を支給した。
    (3)重点アクションプランの経済的学生支援強化事業として、前年度に引き続き平成30年度も授業料免除のため1億円の予算を措置した。
  2. 留学生・外国人研究者向けに、民間資金を活用した宿舎整備事業に取り組んでおり、新たに、東山二条(50戸)と百万遍(86戸)の計136戸の宿舎整備を進め、令和元年10月供用開始の予定である。

3. 新たな社会貢献を目指して

社会との連携 社会への貢献 日本とASEANの相互発展
  1. 「日ASEAN科学技術イノベーション共同研究拠点-持続可能開発研究の推進」(JASTIP)
    平成27年に採択されたJST国際科学技術共同研究推進事業(戦略的国際共同研究プログラム) 「国際共同研究拠点」のもと実施するプロジェクトにおいて、平成30年度においてもタイ、インドネシア、マレーシアの「環境・エネルギー」、「生物資源・生物多様性」、「防災」の3分野の サテライト拠点 において、日本とASEANの研究者による持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた国際共同研究を実施し、研究開発された成果の社会実装(産学マッチングを通じた遺伝子資源利用等)を促進するよう国際協力を行った。また、本学プロボスト及びASEAN拠点関係者等とASEANを代表する国立研究機関3機関(タイ国科学技術開発庁(NSTDA)、インドネシア科学院(LIPI)、マレーシア日本国際工科院(MJIIT))の関係者による 座談会「SDGs達成に向けた日ASEAN科学技術協力の新しい姿」(平成30年1月) の報告書を文部科学省科学技術・学術戦略官(国際担当)や日ASEAN科学技術合同委員会等へ共有し(平成30年4月、11月)、政策立案の参考資料として活用を促進した。さらに、ASEAN事務局傘下のASEAN科学技術センター群と研究ネットワークをさらに強化することにより、次世代のイノベーション人材の育成を促進した。本事業に関しては、本学の海外拠点である ASEAN拠点 が学内外ネットワーク強化等の支援を行っている。
  2. 本学ASEAN拠点は、平成30年3月に、日本の大学では初めて タイ政府労働省からタイにおける外国法人の活動認可(NGO)を受け、平成30年5月に認可証明書が授与された。 この認可により、拠点運営の安定化・恒常化が図られる。また、 NGO認可記念式典をタイ国立科学技術開発庁(NSTDA)との学術交流協定調印式とあわせて開催 し、本学との交流が深い在タイの協定校幹部や共同研究を続けている日泰の研究者などが出席したほか、本学のASEAN地域における教育・研究活動に関するポスターセッションも⾏った(平成30年9月、タイ・バンコク、約100名参加)。このたびのNGO認可を受け、ASEAN拠点の活動基盤をより一層強固なものとしたことにより、日ASEANにおける科学技術協力・研究連携の推進、教育事業の拡充並びにネットワーク形成の強化を進め、相互発展に貢献することが期待される。
人文・社会科学の未来形発信
  1. 本学における人文・社会科学分野の発信方策に関する指針として「『人文知の未来形発信』に向けて」を策定し(平成30年7月10日開催部局長会議に報告。)、10月1日付けで発信事業を実働的に担う部局横断的な 人社未来形発信ユニット 学際融合教育研究推進センター に設置した。同ユニットは、本学を軸とする⽇本全体の⼈社系学術活動の活性化と国内外への発信⼒強化に寄与するための拠点であり、今後、海外出版社からの書籍刊行やアジア人文学をテーマとしたシンポジウムを行うことなどにより積極的な情報発信を行っていく予定である。
  2. 社会や学術界で今後重要となる新しい課題を解決しようとする異分野融合の場の構築を支援する 分野横断プラットフォーム構築事業 では、人工知能科学者と社会科学研究者とが、人工知能の社会実装の過程で生じる、技術が人間に置き換わる際の責任問題などの社会課題や制度設計について対話する場が生まれるなど、多くの異分野交流を産み出している。
産官学連携
「京大モデル」構築
  1. 指定国立大学法人 にのみ出資が認められているコンサルティング事業、研修・講習事業等を実施する事業子会社である 京大オリジナル株式会社 を平成30年6月に設立した。すでに本学の出資を受け運営している 「京都大学イノベーションキャピタル 株式会社 」 (ベンチャー支援機能を担う子会社)及び「 関西ティー・エル・オー 株式会社 (令和元年10月に株式会社TLO京都へ名称変更) 」(技術移転機能を担う子会社)と有機的に連携させ、研究成果・知的財産の活用促進に向けた産官学連携の新しい「京大モデル」構築を進めている。
  2. コンサルティング事業の実施・運営のため、産官学連携本部社会連携部門から京大オリジナル 株式会社 に、企業のニーズと大学のシーズとのマッチング等を行う産学連携のリエゾン機能を移転し、企業に対して本学の研究成果活用に向けた営業/マーケティングを実施し、企業との共同研究に向けた調整等も進めており、共同研究(3件)等が開始している。また、本学と京大オリジナル 株式会社 が連携し、ライセンスや共同研究などを通じて研究成果を社会に還元することを目的に、「 京大テックフォーラム 」を月1回のペースで開催し、企業との共同研究等の実現のためのマッチングを行っている(平成30年度開催実績11回、延べ544名参加)。
  3. 産官学連携本部 と京大オリジナル 株式会社 が連携し、産官学のあらゆる組織から将来のリーダー候補が集まり、様々な分野の「本質」を問う講義を通じて、これからの時代の新たな価値を創り出すに足るリーダーシップの知性を磨く「知の道場」を目指して実施する エグゼクティブ・リーダーシップ・プログラム (前期5~7月・後期9~12月、全92コマ、受講者数延18名)を実施した。
「組織」対「組織」 戦略的な共同研究スキームを一層強化し、「組織」対「組織」の産官学連携を推進するため、平成28年度に課題探索型の「組織」対「組織」の包括連携共同研究契約を日立製作所と締結し、「ヒトと文化の理解に基づく基礎と学理の探究」を研究課題として、(1)人工知能(AI)、(2)2050年の大学と企業、(3)超電顕をサブテーマに設定し、株式会社日立製作所との協創によって未来の社会課題を洞察し、その課題解決と経済発展の両立に向けた新たなイノベーション創出への取組みを進めた。また、これらの共同研究を進めていくために、 産官学連携本部 「日立未来課題探索共同研究部門(日立京大ラボ)」 を設置するなど、本格的な産学連携を進める運営体制を構築し、平成30年度においても連携体制を継続し、両者間で課題探索のための協議等を実施して、これらにより、 Society 5.0に向けた応用哲学・倫理学の産学共同研究等の個別共同研究を実施した(平成30年度の実績7件)。

4. 世界に伍する京大流大学運営

ガバナンス強化/財務基盤強化 財務基盤 自己収入の拡大
  1. 京都大学基金の寄附募集活動について、以下の取組等を行った。
    (1) 京都大学基金 の中長期的な活動指針である「京都大学基金戦略(H26)」、創立125周年に向けた具体的な活動計画「基金戦術」に基づく積極的な寄附募集活動を行なうため、ファンドレイザー(寄附募集に係る企画・渉外活動の担い手)を1名増員し基金室の体制を強化した(平成30年度末現在6名)。
    (2) 創立125周年事業 に関し、総長、理事・副学長が大手企業に対し訪問活動(平成30年度30件)等を行い約2.7億円の寄附申込を受けた。また、本学出身の起業家や企業役員の卒業生への訪問活動、各同窓会に対する京都大学基金のPR及び寄附依頼、保護者に対する働きかけ等、ターゲット層に応じた施策を継続的に実施し、新規寄附者の獲得に努めた。
  2. iPS細胞研究基金 等の特定基金に関しては、平成30年度末現在、87億円に達した。平成30年度においては、 本庶佑有志基金 (ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑特別教授が寄附した賞金を原資として若手研究者助成のために設立)や 人社未来形発信ユニット基金 等の新たな基金を設け、自己収入の更なる拡大を目指した。
  3. 自己収入源の多角化に向けた 資金運用 については、平成29年度に施行された 国立大学法人法 改正による規制緩和に対応した収入方策を検討し、平成30年10月から金銭信託による運用を開始した。
京大収益事業 「(4)社会との連携」の取組1.「「京大モデル」の構築」において記載したとおり、 京大オリジナル株式会社を平成30年6月に設立 し、コンサルティング事業、研修・講習事業等を実施することが可能となった。この 京大オリジナル株式会社 と、すでに本学の出資を受け運営している 「京都大学イノベーションキャピタル株式会社」 及び「 関西ティー・エル・オー株式会社(令和元年10月に株式会社TLO京都へ名称変更) 」とを有機的に連携させ、研究成果・知的財産の活用促進に向けた産官学連携の新しい「京大モデル」構築を進め、京大収益事業を展開している。
ガバナンス
京大版プロボストと企画調整会議 総長からプロボストに対して要請された「指定国立大学法人構想に掲げた各種施策の実行に向けた検討」に関して、プロボストを議長とする戦略調整会議の下に置かれた各小委員会において、前年度から引き続き「若手教員ポストの拡充施策」、「 On-site Laboratory の設置」、「「GST(Graduate Student Training)センター(仮称)」の設置」、「「留学生リクルーティングオフィス(仮称)」の設置」、「人文・社会科学の未来形発信」、「政府への要望(授業料設定の柔軟化)」について議論するとともに、平成30年度は新たに「教員の業績評価」について議論を開始した。
上記のとおり各小委員会において意欲的に議論が積み重ねられた結果(平成30年度の各小委員会の開催総回数:30回)、平成30年度においては、若手教員ポストの拡充の取組の一つである若手重点戦略定員事業の制度化、海外の大学や研究機関等との現地運営型研究室である On-site Laboratoryの設置 、人文・社会科学分野に係る発信事業を実働的に担う 人社未来形発信ユニット の設置に繋がった。プロボスト及び戦略調整会議が有効に機能し、 指定国立大学法人構想 に掲げた施策が着実に進捗している。
エビデンスベースの大学運営 【リサーチ・アドミニストレーター(URA)組織によるエビデンスベースの大学運営の推進】
平成28年度にURAの所属を 学術研究支援室 (研究担当理事の下で研究プロジェクトの企画・運営・研究成果の社会還元を支援する組織)に一元化したことにより、これ以降、全学を俯瞰する分析力が向上し、大学の今後の方向性に係る判断を支援する分析情報を役員へ提供すること等による大学の経営マネジメント強化への貢献が拡大した(平成30年度87件提供)。さらに、4名のURAが 指定国立大学法人構想 に基づき設置されたプロボストオフィスにメンバーとして参画し、研究IRを担当するURA、国際グループURA等と協働して、プロボストが行う活動に必要な調査や情報の収集・提供を行っている。

【戦略策定に資する調査の実施及び分析情報の提供等による担当部課における戦略実施の支援(IRに関する取組)】
  1. 学内外で重要な課題とされている「教員業績評価」について、海外で現地調査した制度やその運用上の課題を、海外トップ大学の先進事例として戦略調整会議及び小委員会に提示することで、制度設計における議論を促進し施策の検討を推し進めることにつながった。
  2. 「留学生リクルーティングオフィス(仮称)」については、国内外他大学の関係者に運用や体制に係るヒアリングを行い、当該ヒアリング結果を先進事例として提示することで、戦略調整会議小委員会での効果的な施策の立案に寄与した。さらに、留学生リクルーティングポータル(留学生募集に関するウェブサイト)に関する海外大学の事例を調査分析し、本学の状況に照らした具体的な戦術を提案するなど、戦略策定支援に留まらない活動を行った。
以上のように、エビデンスベースでの大学運営を推進するため、平成30年度においては、学内外から収集した情報に基づき、海外大学における教員年齢構成および本学の教員年齢構成、他大学の教員評価の仕組み、海外大学における授業料収入、大学収入の構成等といったテーマについて調査分析を行い、その結果から見える本学の課題等について取りまとめた22件のレポートを戦略調整会議及び小委員会、理事・副学長会議にて提示し、総長、担当理事の国際的な状況を踏まえた意思決定を支援した。