1. 柔軟かつダイナミックな体制による知の創造
研究力強化/国際協働 | 最先端研究の推進 | 再生医療と先端医学研究 | 再生医療と先端医学研究においては、iPS細胞の早期実用化に向けて、新たな臨床用iPS細胞ストックの提供を開始する等、再生医療の実現化を推進した。令和2年度にiPS細胞及びiPS細胞技術を利用する医療・創薬の早期実用化に向けた研究をさらに強化推進するため、医学部附属病院次世代医療・iPS細胞治療研究センターを設置し、令和5年度には新型コロナウイルスワクチンに係る観察研究等、39件の臨床研究や臨床試験を実施した。また、iPS細胞の製造や品質評価等の技術を産業界へと橋渡しする機能を担うため、iPS細胞研究所から一部の機能を分離する形で「京都大学iPS細胞研究財団」を設立し、活動を行っている。 |
化学と生命科学の融合(iCeMS) | WPI(世界トップレベル研究拠点プログラム)アカデミー拠点である物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)及び連携研究拠点等において、次のような国際的な最先端研究を展開した。 | ||
高等研究院 | 高等研究センター、WPI(世界トップレベル研究拠点プログラム)アカデミー拠点である物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)、WPI拠点であるヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)及び連携研究拠点等において、次のような国際的な最先端研究を展開した。
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On-site Laboratory | On-site Laboratory事業に関し、学内での議論を踏まえて平成30年9月に制度化し、令和5年度末時点で計11件のOn-site Laboratoryを運営している。On-site Laboratoryでは、iPS細胞、がん研究、材料科学、環境工学等の分野で国際共同研究の展開が見られ、取組中の国際共同研究プロジェクトが38件に達したほか、計20報の国際共著論文が発表されるなど、国際共同研究の活発化が確認できた。 また、令和4年度より開始した「OSL事業を活用した国際的な研究活動支援経費事業」により採択されたOn-site Laboratoryにおいて、以下のような取り組みを行った結果、若手研究者の交流の促進や海外大学に在籍する優秀な学生のリクルーティング活動の促進に繋げることができた。 【具体的な取り組み例】
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2. 高度で多様な頭脳循環の形成
人材獲得 ・育成/国際化 | 学生 | Kyoto iUP (Kyoto University International Undergraduate Program) |
Kyoto iUP(Kyoto University International Undergraduate Program)は、優秀で志高い留学生の学部段階での受入れを拡充するとともに、国際性豊かなキャンパス環境を創造し、同時に国際社会で活躍する日本人学生を養成することを目的としている。令和4年度に実施した予備教育履修生選抜審査(令和5年度生選抜審査)では、437名の志願者を得て、24名が最終合格、入学意思確認の結果19名が入学した。令和5年度生に対し、令和5年9月までプレ日本語予備教育として、出身国・地域の語学教育機関における日本語学習の受講費をサポートするとともに、令和5年10月からは国際高等教育院において日本語教育及び教育到達状況に差のある数学、物理、化学、生物、世界史の補習を中心に予備教育を実施した。在籍するKyoto iUP留学生は学部生・予備教育履修生合わせて91名(19の国・地域)となり、広く海外から優秀で志高い留学生の受入れ拡充が進んでいる。 また、現地渡航及びオンラインイベントを組み合わせた広報・リクルート活動を計51回実施し、延べ2,500名以上の学生・保護者・教員等にアプローチした。主な対象国・地域は、ASEAN6ヶ国(タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン)をはじめ、台湾、香港、シンガポール、インド等である。 |
卓越大学院プログラム | 「先端光・電子デバイス創成学」、「メディカルイノベーション大学院プログラム」、「社会を駆動するプラットフォーム学卓越大学院プログラム」について、順調に学生が入学しており、それぞれ59名、96名、38名(令和6年3月31日現在)の履修者が在籍し、プログラム修了者20名を輩出している。 | ||
大学院共通・横断教育科目群 | 「大学院共通科目群」について、令和5年度は開講科目数35科目、履修者数1,953名となった(令和4年度32科目1,534名)。「産学協同教育コース」及び「教育能力向上コース」の開設に伴い、令和5年度から大学院共通科目として以下の5科目を新規開講した。
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大学院教育支援機構 GST(Graduate Student Training)機能の強化及び留学生リクルーティング |
令和3年10月に大学院教育支援機構を設置し、学生に対する経済支援の拡充、優秀な留学生の獲得、キャリア形成及び産学連携活動に資する教育機会の提供等の大学院教育にかかる各支援について、各研究科単独では困難な課題に対して全学的かつ包括的に取組を行っている。 指定国立大学構想のもとでTA教育等を担っていたGST推進室の機能については、大学院教育支援機構に置かれた就学・キャリアサポートオフィスで見直しを行い、大学教員を目指す大学院生の授業設計能力・運営能力を涵養する「教育能力向上コース」として整理し、同コースを令和5年度から新設した。 TA教育に関しては、TAの上位職として、博士後期課程学生、4年制博士課程及び一貫制博士課程の後期3年に相当する課程の大学院生がより高度で自律的な教育補助業務に携わるTAS(Teaching Associate)を制度化した。 さらに、大学院教育支援機構アドミッション支援室(AAO)において、全世界を対象に留学希望者からの問合せ対応、各国の教育制度や資格制度の検証、本学大学院への進学希望者の学歴検証及び進学希望者と各学部・研究科等についての丁寧な情報提供などを行うことで、優秀な留学生の獲得のための支援を行った。また、留学生受入に意欲のある部局及び海外拠点と協力し、他大学等主催の留学フェアへの参加だけでなく現地での募集活動を行うなど、積極的に留学生リクルーティング活動を行った。 本年度は、昨年度参加した他機関主催のオンライン留学フェアの精査を行い、他機関主催のオンライン留学フェアを中心に7件参加して積極的に本学のアピールを行った。また、大学院教育支援機構の海外渡航を伴うリクルート活動として、台湾・インド・インドネシアを重点対象地域と定めて活動を展開した。台湾では、台湾教育部との博士課程の共同奨学金を新たに創設し、これを記念して12月に総長・理事ら複数の執行部教員が訪台した。これらの広報活動の効果もあり、アドミッション支援室には、全世界の本学大学院進学希望者から2,339件の申請があった。 大学院教育支援機構グローバル展開オフィスの取組として、海外の優秀な留学生を積極的に受け入れる意欲のある研究科専攻(研究室)をピックアップし、その研究内容を具体的に紹介する動画を製作するとともに、これらの動画を掲載するポータルサイト・Meet KU Researchersを整備した。併せて、教職員向けに奨学金情報、海外広報や大学院留学生リクルートに必要な情報をまとめた学内向けサイトを公開・拡充した。 |
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大学院生・留学生への施策 | 学生への経済支援の強化を進めるため、民間資金の獲得に向けた以下の取組を行い、国内外を問わず優秀で高い志を持つ人材の獲得・育成を図った。
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若手研究者 | 白眉プロジェクト | 自由闊達で独創的な発想に基づく挑戦的な課題研究に取り組む若手研究者を、学術領域を問わず世界中から募り、その研究を5年間保証する京都大学次世代研究者育成支援事業「白眉プロジェクト」については、プロジェクトの構成を見直し、従前の白眉プロジェクトを踏襲した【グローバル型】に加え、文部科学省「卓越研究員事業」を活用した【部局連携型(テニュアトラック型)】による募集を平成28年度から新たに行い、テニュアトラック制の若手研究者採用のスキームを確立した。【グローバル型】については、令和5年度は採用予定人数を前年度公募と同規模の20名として公募を開始し、326名の応募があり、20名(准教授6名、講師1名、助教13名)の採用を決定した。 | |
優秀な若手教員獲得・育成 | 若手教員雇用の促進に資する施策として、企画委員会の下に設置した若手重点戦略定員専門委員会において、平成30年度に若手重点戦略定員事業を制度化し、学内公募・審査を経て、平成31年4月1日付けで34学系に助教計40名分、令和3年4月1日付で20学系に助教計20名分の定員を措置するに至った。本施策を契機に、各学系における適正な教員年齢構成実現に向けた意識の醸成と若手教員の雇用拡大が進捗しており、同時に大学全体の若手教員比率向上につながった。今後は、雇用した若手教員を中心とした研究の活性化を目指す。 本学は指定国立大学法人構想で第4期中期目標期間内に若手教員比率を30%に引き上げることを目標としているが、令和5年度末時点の若手教員比率は24.8%となった。引き続き、若手重点戦略定員事業等を活用し、若手教員の雇用拡大を図っていくとともに、雇用した若手教員を中心とした研究の活性化を目指す。 |
3. 新たな社会貢献を目指して
社会との連携 | 産官学連携 | 「京大モデル」の構築 | 京都大学が有する研究成果等の「知」の更なる活用促進のため、コンサルティング事業、研修・講習事業等を実施する事業子会社である京大オリジナル株式会社が中心となり、産業界を始めとした多様なステークホルダーとの連携拡大を目指した取組みを進めることで、産官学連携の新しい「京大モデル」構築によるバリューチェーン(価値連鎖)を加速的に展開した。 令和5年度においては、カーボンニュートラルの実現に向けた産官学の広範な連携体制の構築や共同研究および新規事業の創出を目的として、京都大学、株式会社日本総合研究所、京大オリジナル株式会社の三者による協業活動の協定を締結した。今後、三者はカーボンニュートラルに向けたあるべき姿の議論、共同研究や実証実験の企画、民間企業や政府機関と協働した研究会・コンソーシアムの企画、情報発信、政策提言、外部機関との連携などを推進していく。 |
「組織」対「組織」による産官学連携の促進 | 大型共同研究の企画提案や産官学連携本部等による研究の集中的マネジメントにより「組織」対「組織」の大型連携を開始し、企業との連携を強めた。また、全学の研究テーマをベースに「組織」対「組織」の本格的な大型共同研究を企画し実施する研究拠点であるオープンイノベーション機構を通じた企業との調整・交渉支援、及び産官学連携本部等を通じた研究契約、知財、その他産学連携活動における法務支援等の全学サポートにより共同研究組成を加速させた。 | ||
社会への貢献 | 日本とASEANの相互発展 | 平成27年に採択され、引き続き第2フェーズ(令和2年9月~令和7年3月まで)が開始されたJST国際科学技術共同研究推進事業(戦略的国際共同研究プログラム)「国際共同研究拠点」のもと実施するプロジェクト「日ASEAN科学技術イノベーション共同研究拠点-持続可能開発研究の推進」(JASTIP)により、中核拠点・研究総括班(WP1)として共同研究のコミュニティを拡大・強化するJASTIP-Netを企画実施した。本プロジェクトにおいて、新規に23件の共同研究ネットワークの形成を支援し、SDGs達成に向けた多面的・多層的な共同研究プラットフォームの形成を行った。なお、本プロジェクトについては全学海外拠点であるASEAN拠点が支援を行っている。 また、リサーチ・アドミニストレーター(URA)が、科学技術連携を担うコーディネーター人材の育成に向けて、ASEAN地域での各種会議及びワークショップで講演を行い、日ASEAN共同研究のネットワークの基盤強化を図った。 さらに、日ASEAN友好協力50周年を記念するイベント(5月・8月・11月)の企画・運営に加わり、科学技術イノベーションにおけるASEAN地域との連携体制を強化した。 |
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人文・社会科学の未来形の発信 | 令和5年4月1日付けで研究院長が交代し、副研究院長を3名体制にするとともに、調整会議を研究院長と副研究院長を構成員とする執行部会議に再編し、研究院長を支援する体制を整備した。新体制として、「学内での学際連携による総合知の創出」、「産業界や行政などの社会連携から創発する新たな研究の推進」、「人文社会科学の知見の学術的発信機能の拡充・強化」の3つの方針により、研究力の底上げと、人文社会科学知財の国際的な活用・プレゼンスの向上に取り組み、将来的には人文社会科学の国際的な拠点となることが期待される。 人と社会の未来研究院において、以下のような各種取組が実施されており、人文・社会科学の分野における分野相互間の交流や文理融合的取組を促進し、人文・社会科学の未来形を切り拓く動きが進んでいる。
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4. 世界に伍する京大流大学運営
ガバナンス強化/財務基盤強化 | ガバナンス強化 | 京大版プロボストと戦略調整会議 | 戦略調整会議からの答申をもとに国際卓越研究大学構想の検討を進めており、プロボストが執行部・部局との調整役として構想の更なる具体化を推進するとともに、世界に伍する研究大学に向けた構造改革(研究力の強化、研究成果の活用推進、自律的な大学組織への変革)の中でも、先行して実現可能な組織再編に着手した。具体的には、研究成果の活用を推進する組織として成長戦略本部を設置し、執行部の戦略的意思決定を支えるための事務組織再編(総長オフィス、CFOオフィスの設置)を行った。 |
エビデンスベースの大学運営 | 大学の今後の方向性に係る判断を支援する分析情報を、リサーチ・アドミニストレーター(URA)が役員へ提供することで、大学の経営マネジメント強化への貢献が拡大した(令和5年度54件提供)。また、プロボストが行う業務に係る必要な企画立案、連絡調整等を行うプロボストオフィスにURAがメンバーとして参画し、研究IRを担当するURA、国際グループURA等と協働して、プロボストが行う活動に必要な調査や情報収集・提供を行った。 さらに、IR推進室において、大学運営に関する課題等、様々なテーマについて調査分析を行い、その結果から見える本学の課題等について取りまとめたレポートを総長・理事に提示し、執行部の迅速な意思決定を支援した。また、エビデンスベースの大学運営をサポートするために必要となる情報を集約し、本学がどのように社会的責任を果たしているかを明らかにするため、令和5年度より「アカウンタビリティレポート2023」を新たに制作した。 学内連携強化の結果、アカウンタビリティレポートの制作・公表を通じて、大学の運営や成果、状況に係る情報公開の程度を質と量ともに向上させていくとともに、基本情報のデータセットやその分析に資する情報が誰でも容易に入手できる環境の整備を進めることで、本学のビジビリティ向上にも繋がり、本学経営協議会の委員からも高く評価された。 |
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財務基盤強化 | 自己収入の拡大 | 京都大学基金の寄附募集活動について、以下のような取組を行った。 渉外部のもとに従来の基金室を改編した京都基金室、東京基金室を新設した。寄附拡大の成果を収めるためには、関西圏と関東圏の経済規模を踏まえると、経営者層や企業役員クラスなど在京のキーマンの開拓は必要不可欠であり、東京の日本橋に東京基金室専用のオフィスを設置するとともにファンドレイザーを配置・増員し体制の強化を図った。両基金室のファンドレイザー(寄附募集に係る企画・渉外活動の担い手)が中心となり、主に本学出身者が役員を務める企業を中心として、個別訪問等の寄附募集活動を実施した。また、企業訪問の他、本学主催のフォーラム等のイベントを最大限に活用し、その参加者に対して、寄附の呼びかけを実施した。
従前より行っている金銭信託運用等に加えて、令和3年度に受入を行った「小野薬品・本庶記念研究基金」(230億円)を原資とした資金運用について、金銭信託による委託運用の運用規模を拡大した。本運用では、資金運用管理委員会による適切なリスク管理のもと、円建債券による自家運用と金銭信託による委託運用を組み合わせた新たな手法により、安定的なリターンの獲得を目指している。 |
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京大収益事業 | 平成29年6月30日に本学が指定国立大学法人に指定され、指定国立大学法人にのみ出資が認められているコンサルティング事業、研修・講習事業等を実施する事業子会社である京大オリジナル株式会社を平成30年6月に設立し、ベンチャー創出機能を有する「京都大学イノベーションキャピタル株式会社」及び技術移転機能を有する「株式会社TLO京都」、「iPSアカデミアジャパン株式会社」の子会社と、また、法務部門から独立化を図った「京都アカデミア法律事務所」、組織対組織の共同研究等を集中的にマネジメントする「オープンイノベーション機構」との有機的な連携を図るなど、研究成果・知的財産の活用促進に向けた産官学連携の新しい「京大モデル」構築を令和5年度も引き続き進展させた。 |