1. 柔軟かつダイナミックな体制による知の創造
研究力強化/国際協働 | 最先端研究の推進 | 再生医療と先端医学研究 | 再生医療と先端医学研究においては、iPS細胞の早期実用化に向けて、新たな臨床用iPS細胞ストックの提供を開始する等、再生医療の実現化を推進した。令和2年度にiPS細胞及びiPS細胞技術を利用する医療・創薬の早期実用化に向けた研究をさらに強化推進するため、医学部附属病院次世代医療・iPS細胞治療研究センターを設置し、令和4年度には新型コロナウイルスワクチンに係る観察研究等、31件の臨床研究や臨床試験を実施した。また、iPS細胞の製造や品質評価等の技術を産業界へと橋渡しする機能を担うため、iPS細胞研究所から一部の機能を分離する形で「京都大学iPS細胞研究財団」を設立し、活動を行っている。 |
化学と生命科学の融合(iCeMS) | WPI(世界トップレベル研究拠点プログラム)アカデミー拠点である物質-細胞統合システム拠点 (iCeMS)及び連携研究拠点等において、次のような国際的な最先端研究を展開した。
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高等研究院 | 高等研究センター、WPI(世界トップレベル研究拠点プログラム)アカデミー拠点である物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)、WPI 拠点であるヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)及び連携研究拠点等において、次のような国際的な最先端研究を展開した。
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On-site Laboratory | On-site Laboratory事業に関し、学内での議論を踏まえて平成30年9月に制度化し、令和4年度末時点で計11件のOn-site Laboratoryが運営されている。On-site Laboratoryでは、再生医療や、がん研究をはじめ、新たな国際共同研究の展開が見られ、取組中の国際共同研究プロジェクトが32件に達したほか、計26報の国際共著論文が発表されるなど、国際共同研究の活発化が確認できた。 また、令和4年度より開始した「OSL事業を活用した国際的な研究活動支援経費事業」により採択されたOn-site Laboratoryにおいて、以下のような取り組みを行った結果、若手研究者の交流の促進や海外大学に在籍する優秀な学生のリクルーティング活動の促進に繋げることができた。 【具体的な取り組み例】
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2. 高度で多様な頭脳循環の形成
人材獲得 ・育成/国際化 | 学生 | Kyoto iUP (Kyoto University International Undergraduate Program) |
Kyoto iUP(Kyoto University International Undergraduate Program)は、優秀で志高い留学生の学部段階での受入れを拡充するとともに、国際性豊かなキャンパス環境を創造し、同時に国際社会で活躍する日本人学生を養成することを目的としている。令和3年度に実施した予備教育履修生選抜審査(令和4年度生選抜審査)では、前年度実績を上回る520名の志願者を得て、30名が最終合格、入学意思確認の結果26名が入学した。この令和4年度生には、令和4年9月までプレ日本語予備教育として、出身国・地域の語学教育機関における日本語学習の受講費をサポートするとともに、令和4年10月からは国際高等教育院において日本語及び教育到達状況に差のある数学、物理、化学、世界史を中心に予備教育を実施した。在籍するKyoto iUP留学生は学部生・予備教育履修生合わせて75名(16の国・地域)となり、広く海外から優秀で志高い留学生の受入れ拡充が進んでいる。 また、現地渡航及びオンラインイベントを組み合わせた広報・リクルート活動を計21回実施し、延べ1,698人の参加者を得た。主な対象国・地域は、ASEAN6ヶ国(タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン)をはじめ、台湾、香港、シンガポール、インド等である。 |
卓越大学院プログラム | 「先端光・電子デバイス創成学」、「メディカルイノベーション大学院プログラム」、「社会を駆動するプラットフォーム学卓越大学院プログラム」について、順調に学生が入学しており、それぞれ65名、86名、31名(令和5年3月31日現在)の履修者が在籍し、プログラム修了者13名を輩出している。 | ||
大学院共通・横断教育科目群 | 「大学院共通科目群」について、令和4年度は開講科目数32科目、履修者数1,534名となった(令和3年度 31科目 1,480名)。大学院共通科目群のコア科目であり研究公正の教育や啓発などの倫理教育を行う「研究倫理・研究公正」について、履修学生の専攻分野に応じて(人社系)(理工系)(生命系)の分野別に開講しているが、対応する英語科目についても、令和4年度新たに人社系科目「Research Ethics and Integrity (Humanities and Social Sciences)」を2コマ開講し、日英の対応が完成した。 「大学院横断教育科目群」について、令和2年度から続くコロナ禍により各研究科等からの提供科目数が減ったこともあり、令和4年度は開講科目数87 科目、履修者数620 名となった(令和3年度 91科目 738名)。 |
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大学院教育支援機構 GST (Graduate student Training) 機能の強化及び留学生リクルーティング | 令和3年10月に大学院教育支援機構を設置し、学生に対する経済支援の拡充、優秀な留学生の獲得、キャリア形成及び産学連携活動に資する教育機会の提供等の大学院教育にかかる各支援について、各研究科単独では困難な課題に対して全学的かつ包括的に取組を行っている。 指定国立大学構想のもとでTA教育等を担っていたGST推進室の機能については、大学院教育支援機構に置かれた就学・キャリアサポートオフィスで見直しを行い、大学教員を目指す大学院生の授業設計能力・運営能力を涵養する「教育能力向上コース」として整理し、同コースを令和5年度から新設することを決定した(令和4年7月大学院教育支援機構協議会)。 TA教育に関しては、TA の上位職として博士後期課程学生がより高度で自律的な教育補助業務に携わるTAS (Teaching Associate)を令和5年度中に制度化することを決定した(令和5年1月大学院教育支援機構協議会)。 さらに、大学院教育支援機構アドミッション支援室(AAO)において、全世界を対象に留学希望者からの問合せ対応、各国の教育制度や資格制度の検証、本学大学院への進学希望者の学歴検証及び進学希望者と各学部・研究科等についての丁寧な情報提供などを行うことで、優秀な留学生の獲得のための支援を行った。また、留学生受入に意欲のある部局及び海外拠点と協力し、他大学等主催の留学フェアへの参加だけでなく現地での募集活動を行うなど、積極的に留学生リクルーティング活動を行った。 本年度は、昨年度参加した他機関主催のオンライン留学フェアの精査を行い、他機関主催のオンライン留学フェアに17件、昨年度は参加できなかった他機関主催のオンサイト留学フェアに1件参加して積極的に本学のアピールを行った。また、ASEAN拠点(タイ)、化学研究所(フィリピン)と協力してオンサイトでの留学説明会を開催した。これらの広報活動の効果もあり、アドミッション支援室には、全世界の本学大学院進学希望者から1,981件の申請があった。 大学院教育支援機構グローバル展開オフィスの取組として、海外の優秀な留学生を積極的に受け入れる意欲のある研究科専攻(研究室)をピックアップし、その研究内容を具体的に紹介する動画を製作するとともに、これらの動画を掲載するポータルサイト・Meet KU Researchersを整備した。併せて、教職員向けに奨学金情報、海外広報や大学院留学生リクルートに必要な情報をまとめた学内向けサイトを整備した。 |
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大学院生・留学生への施策 | 学生への経済支援の強化を進めるため、民間資金の獲得に向けた以下の取組を行い、国内外を問わず優秀で高い志を持つ人材の獲得・育成を図った。
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若手研究者 | 白眉プロジェクト | 自由闊達で独創的な発想に基づく挑戦的な課題研究に取り組む若手研究者を、学術領域を問わず世界中から募り、その研究を5年間保証する京都大学次世代研究者育成支援事業「白眉プロジェクト」については、プロジェクトの構成を見直し、従前の白眉プロジェクトを踏襲した【グローバル型】に加え、文部科学省「卓越研究員事業」を活用した【部局連携型(テニュアトラック型)】による募集を平成28年度から新たに行い、テニュアトラック制の若手研究者採用のスキームを確立した。【グローバル型】については、令和4年度は採用予定人数を前年度公募よりも5名多い20名として公募を開始し、283名の応募があり、20名(准教授6名、助教14名)の採用を決定した。 | |
優秀な若手教員獲得・育成 | 若手教員雇用の促進に資する施策として、企画委員会の下に設置した若手重点戦略定員専門委員会において、平成30年度に若手重点戦略定員事業を制度化し、学内公募・審査を経て、平成31年4月1日付けで34学系に助教計40名分、令和3年4月1日付で20学系に助教計20名分の定員を措置するに至った。本施策を契機に、各学系における適正な教員年齢構成実現に向けた意識の醸成と若手教員の雇用拡大が進捗しており、同時に大学全体の若手教員比率向上につながった。今後は、雇用した若手教員を中心とした研究の活性化を目指す。 本学は指定国立大学法人構想で第4期中期目標期間内に若手教員比率を30%に引き上げることを目標としているが、令和4年度末時点の若手教員比率は24.2%となった。引き続き、若手重点戦略定員事業等を活用し、若手教員の雇用拡大を図っていくとともに、雇用した若手教員を中心とした研究の活性化を目指す。 |
3. 新たな社会貢献を目指して
社会との連携 | 産官学連携 | 「京大モデル」の 構築 | 令和4年度においては、京都大学が有する研究成果等の「知」の更なる活用促進のため、コンサルティング事業、研修・講習事業等を実施する事業子会社である京大オリジナル株式会社が中心となり、産業界を始めとした多様なステークホルダーとの連携拡大を目指した取組みを進めた。具体的には、本学の知を活かした研修・セミナー等の展開を基礎として、企業等からのニーズを反映させながら、オーダーメイド型の交流企画の策定、リカレント教育を含めた情報発信の強化など、様々なマッチングイベントや社会人向け教育プログラム等を積極的に実施することで、 産官学連携の新しい「京大モデル」構築によるバリューチェーン(価値連鎖)を加速的に展開した。 |
「組織」対「組織」による 産官学 連携の促進 | 大型共同研究の企画提案や産官学連携本部等による研究の集中的マネジメントにより「組織」対「組織」の大型連携を開始し、企業との連携を強めた。また、全学の研究テーマをベースに「組織」対「組織」の本格的な大型共同研究を企画し実施する研究拠点であるオープンイノベーション機構を通じた企業との調整・交渉支援、及び産官学連携本部等を通じた研究契約、知財、その他産学連携活動における法務支援等の全学サポートにより共同研究組成を加速させた。
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社会への貢献 | 日本とASEANの相互発展 | 平成27年に採択され、引き続き第2フェーズ(令和2年9月~令和7年3月まで)が開始されたJST国際科学技術共同研究推進事業(戦略的国際共同研究プログラム) 「国際共同研究拠点」のもと実施するプロジェクト「日ASEAN 科学技術イノベーション共同研究拠点-持続可能開発研究の推進」(JASTIP)により、中核拠点・研究総括班 (WP1) として 共同研究のコミュニティを拡大・強化するJASTIP-Netを企画実施した。本プロジェクトにおいて、新規に31件の共同研究ネットワークの形成を支援し、SDGs達成に向けた多面的・多層的な共同研究プラットフォームの形成を行った。なお、本プロジェクトについては全学海外拠点であるASEAN拠点が支援を行っている。 また、リサーチ・アドミニストレーター(URA)が、ASEAN FoundationやASEAN事務局と協働で、日ASEAN科学技術連携を担うコーディネート人材の養成に向けたオンライン勉強会シリーズ(計2回)を開催し、日ASEAN共同研究のネットワークの基盤強化を図った。 |
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人文・社会科学の未来形の発信 | 令和4年4月1日に、こころの総合的研究を通じて多くの学際的研究を行ってきた「こころの未来研究センター」と主に人文・社会科学分野の発信事業を推進してきた「人社未来形発信ユニット」を発展的に解消し、新たに人と社会の未来研究院を設置した。新組織の主な役割・機能は、(1)学際研究の促進と新規分野の開拓並びに自然科学をはじめとする他分野への貢献、(2)国際学術誌編集及び研究成果可視化・発信機能、(3)社会連携・コンサルティング機能、(4)URA育成機能等となっている。 人と社会の未来研究院において、以下のような各種取組が実施されており、人文・社会科学の分野における分野相互間の交流や文理融合的取組を促進し、人文・社会科学の未来形を切り拓く動きが進んでいる。
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4. 世界に伍する京大流大学運営
ガバナンス強化/財務基盤強化 | ガバナンス強化 | 京大版プロボストと戦略調整会議 | 総長からプロボストに対して検討を要請した「大学ファンド及び国際卓越研究大学制度(仮称)に対する本学の対応」に関して、プロボストを議長とする戦略調整会議において検討を行った結果、同制度への申請を目指す方向で、今後より具体的な検討を行うべき、との方向性を示した。それを受けて、部局長会議の下に「国際卓越研究大学構想検討委員会」が設置される等、全学での議論が促進され、令和5年3月の国際卓越研究大学制度への申請に繋がった。 |
エビデンスベースの大学運営 | 大学の今後の方向性に係る判断を支援する分析情報を、リサーチ・アドミニストレーター(URA)が役員等へ提供することで、大学の経営マネジメント強化への貢献が拡大した(令和4年度73件提供)。また、プロボストが行う業務に係る必要な企画立案、連絡調整等を行うプロボストオフィスにURAがメンバーとして参画し、研究IRを担当するURA、国際グループURA等と協働して、プロボストが行う活動に必要な調査や情報収集・提供を行った。 さらに、IR推進室において、大学運営に関する課題等、様々なテーマについて調査分析を行い、その結果から見える本学の課題等について取りまとめたレポートを総長・理事に提示し、執行部の迅速な意思決定を支援した。本学が置かれている現状を認識し、エビデンスベースの大学運営をサポートするため、以下3つの考え方に基づき、令和4年度より新たにアカウンタビリティレポートの編纂を開始した。
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財務基盤強化 | 自己収入の拡大 | 京都大学基金の寄附募集活動について、以下のような取組を行った。 「京都大学基金戦略」に基づき創立125周年事業実施のための寄附募集活動を強化した。具体的には、基金室のファンドレイザー(寄附募集に係る企画・渉外活動の担い手)が中心となり、主に本学出身者が役員を務める企業を中心として、個別訪問等の寄附募集活動を実施するとともに、部局基金と連携のうえ、特定のプロジェクトへの寄附者を、大学全体の支援(学生への返済不要の奨学金による支援)への寄附につなげる取り組みを実施した。また、企業訪問の他、本学主催のフォーラム等のイベントを最大限に活用し、その参加者に対して、寄附の呼びかけを実施した。
従前より行っている金銭信託運用等に加えて、令和3年度に受入を行った「小野薬品・本庶記念研究基金」(230億円)を原資とした新たな資金運用を開始し、大学全体の運用規模を大幅に拡大した。 本運用では、資金運用管理委員会による適切なリスク管理のもと、円建債券による自家運用と金銭信託による委託運用を組み合わせた新たな手法により、安定的なリターンの獲得を目指している。 |
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京大収益事業 | 平成29年6月30日に本学が指定国立大学法人に指定され、指定国立大学法人にのみ出資が認められているコンサルティング事業、研修・講習事業等を実施する事業子会社である京大オリジナル株式会社を平成30年6月に設立し、ベンチャー創出機能を有する「京都大学イノベーションキャピタル株式会社」及び技術移転機能を有する「株式会社TLO京都」、「iPSアカデミアジャパン株式会社」の子会社と、また、法務部門から独立化を図った「京都アカデミア法律事務所」、組織対組織の共同研究等を集中的にマネジメントする「オープンイノベーション機構」との有機的な連携を図るなど、研究成果・知的財産の活用促進に向けた産官学連携の新しい「京大モデル」構築を令和4年度も引き続き進展させた。 |