新型コロナウイルス感染症パンデミックによってリモートワークの導入が急速に進みました。リモートワーク導入を可能にした先行要因は何か、どのような結果を生んだのかといった問いに答えるため、堂前ひいな 人間・環境学研究科修士課程学生(研究当時)、中山真孝 人と社会の未来研究院特定講師、内田由紀子 同教授らの研究グループは、パンデミック直前の2020年3月を起点として1年ごとに3回のオンライン調査を行いました。
調査は日本の様々な企業の従業員を対象として行い、リモートワークの導入の有無に加えて、所属組織の制度や社会関係、本人の心理傾向など多様な質問を行いました。3回の調査に継続して参加した367名について、業種や職階、居住地などの人口統計学的変数の影響を考慮した上で、リモートワークの先行要因と結果を分析しました。分析からは、成果主義的制度がある企業は、リモートワークを2021年3月時点で導入・継続している可能性が高いことがわかりました。さらに、この時点でリモートワークを導入していた企業の従業員は、1年後の2022年3月時点で個人の独立的心理傾向や組織コミットメントなどを高める一方で、孤立感の増加などの負の影響は(使用した質問項目の中では)見られませんでした。これらの証拠は、リモートワークがコロナ対策の一時的解決策としてだけでなく、日本の職場での組織改革や働き方改革の方策となる可能性を示唆しています。
本研究成果は、2024年3月18日に、国際学術誌「Humanities & Social Sciences Communications」にオンライン掲載されました。
「本研究はコロナ禍以前から以後にかけて実施されましたが、感染症対策の意味合いが薄れた今だからこそリモートワークの効果的な活用方法に頭を抱える企業も多いのではないでしょうか。良い、悪いの二面性で議論するのではなく、日本企業においてリモートワークが具体的に何を変化させうるのかに着目した本研究を通して、今後の日本企業での働き方を考える上での1つの示唆として貢献できれば光栄です。」(堂前ひいな)
【DOI】
https://doi.org/10.1057/s41599-024-02770-7
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/287424
【書誌情報】
Hiina Domae, Masataka Nakayama, Kosuke Takemura, Yasushi Watanabe,
Matthias S. Gobel, Yukiko Uchida (2024). Antecedents and consequences of
telework during the COVID-19 pandemic: a natural experiment in Japan.
Humanities and Social Sciences Communications, 11:314.