なぜ、きのこの仲間は多様なのか?―白亜紀の被子植物との出会いが生んだ多様性―

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 マツタケやシイタケといったきのこの仲間は、食卓に並ぶ種類は限られていますが、自然界には数えきれないほど多種多様な種類が存在します。それでは、なぜ、きのこの仲間は地球上でこれほど高い種多様性をもつようになったのでしょうか。この疑問は、これまでの研究では十分に解明されていませんでした。

 佐藤博俊 人間・環境学研究科助教は、きのこの仲間の大半が含まれるハラタケ綱菌類を対象として、分子系統学の方法からその種多様性の起原を解明する研究を行いました。この研究から、ハラタケ綱菌類は、白亜紀後期(7000万年前~9000万年前)に被子植物と出会い、地下で共生関係を結んだことがきっかけとなって、急速な種多様化を果たした可能性が示されました。本成果は、菌類がどのようにして地球上でも有数の種多様性をもつに至ったのか、菌類と植物が進化の過程でどのように関わってきたのかを解明する上で重要な鍵になります。

 本研究成果は、2023年6月9日に、国際学術誌「New Phytologist」に掲載されました。

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ハラタケ綱の多種多様なきのこの仲間
際立った種多様化が検出された分類群は黄色で示しています。(撮影者:佐藤博俊)
研究者のコメント

「今回の成果は、『なぜ、地球にこれほど多種多様なきのこの仲間が生まれたのか?』という疑問の解明につながるものと考えています。この研究を行う上では様々な障害がありました。例えば、限られた期間に発生するきのこをたくさん収集するのが大変なことや、未報告種があまりにも多いといった問題です。一方で、きのこは未知の領域の宝庫でもあります。今後も、きのこの未知の領域に踏み込む研究を続けたいと思います。」

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1111/nph.19055

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/286321

【書誌情報】
Hirotoshi Sato (2024). The evolution of ectomycorrhizal symbiosis in the Late Cretaceous is a key driver of explosive diversification in Agaricomycetes. New Phytologist, 241(1), 444-460.