Ting Liu 経営管理大学院講師、関口倫紀 同教授らの国際研究グループは、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い世界中の多くの企業でテレワーク主体に移行した2020年に、世界8か国で働く約1,000人の海外駐在員に対して調査を実施しました。その結果、海外駐在員が有する現地語スキルの違いが、彼らのテレワーク環境への適応の仕方を左右することが明らかになりました。
本研究では、海外駐在員がテレワーク環境に適応する方法として、駐在員自らが担当職務の内容に変更を加える「ジョブ・クラフティング」という行動に注目しました。調査の結果、現地語が得意な海外駐在員は、より高い目標やより挑戦的な仕事への接近を志向する「接近型ジョブ・クラフティング」によって新たな環境に適用していく傾向があったのに対し、現地語が苦手な海外駐在員は、業務負荷やストレスを回避するための「回避型ジョブ・クラフティング」によって適応していく傾向があることが分かりました。会社から言語スキル向上のための支援がある場合は、現地語スキルの低さが回避型ジョブ・クラフティングを介した適応につながる傾向が弱まることも分かりました。
本研究成果は、2023年2月6日に、国際学術誌「International Journal of Human Resource Management」にオンライン掲載されました。
「グローバル化が進展する現代経済において、海外駐在員を含むグローバル人材には世界共通語としての英語力が重要であることは論を待ちませんが、海外駐在員にとっては、現地の人々や現地の従業員とのコミュニケーションも必要となるため、現地語が流暢であることには様々なメリットがあります。海外駐在員の現地語スキルが高いと、テレワークのような対面コミュニケーションの乏しい環境に移行しても、前向きな仕事内容の変更を通じて適応することが可能です。一方、現地語が流暢でないと、対面コミュニケーションが乏しい環境や、現地語による情報収集が必要な事態に適応するためには消極的な職務内容の変更に頼りがちです。しかし、企業が従業員の言語スキル向上のために積極的なサポートを行うことで、回避的なかたちでの適応の仕方を抑える効果があると考えられます。」
【DOI】
https://doi.org/10.1080/09585192.2023.2169075
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/285991
【書誌情報】
Ting Liu, Ya Xi Shen, Sijia Zhao, Tomoki Sekiguchi (2023). Approaching or avoiding? Mechanisms of host-country language proficiency in affecting virtual work adaptivity during COVID-19. The International Journal of Human Resource Management, 34(21), 4046-4073.