スマートフォンで学ぶ5つの認知行動スキルがうつ状態を改善─世界最大の臨床試験で解明─

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 古川壽亮 成長戦略本部特定教授、田近亜蘭 医学研究科准教授、豊本莉恵 同特定助教、LUO Yan 同助教(研究当時)、中山健夫 同教授、近藤尚己 同教授、福間真悟 同特定教授らの国際共同研究グループは、人口の10%以上が経験し、労働生産性の低下などの原因となる閾値下うつ状態を有する成人を対象に、スマートフォンを用いて認知行動療法(CBT)スキルを自学自習できるアプリ「レジトレ!®」を開発し、5種類のCBTスキルの効果を検証する世界最大の無作為割り付け比較試験(RCT)を実施しました。

 「レジトレ!®」は、CBTの5つの重要なスキル(行動活性化、認知再構成、問題解決、アサーション、睡眠行動療法)を組み込んだアプリで、個々のスキルおよびその組み合わせを6週間提供します。参加者は、日本全国からオンラインで募集し、スマートフォンアプリによる介入と評価を通じて、実生活環境下でのうつ不安症状に対する効果を検証しました。

 3,936名の参加者のデータを解析した結果、すべてのスキルがうつ状態を改善し、特に行動活性化+認知再構成、行動活性化+問題解決、行動活性化+アサーション、睡眠行動療法の高い効果が確認されました。これらの効果は、26週間後においても持続していました。

 本研究成果は、2025年4月23日に、国際学術誌「Nature Medicine」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント

「私は1985年に医学部を卒業し、爾来、うつ・不安のコモンメンタルディスオーダーの薬物療法と精神療法の実践と研究を続けてきました。この間、薬物療法も精神療法も大きな進歩を遂げてきました。ところが、この40年間、人類におけるうつ病の負担は軽減していません。治療だけではうつ病の苦しみを減らすことはできない、予防が重要だという認識は、ひとり私だけでなく、ランセットうつ病コミッション(2022)の委員にも共通する認識でした。しかし、薬物療法には副作用がある、精神療法には人と時間がかかる・・・そういう中、インターネット認知行動療法がうつ・不安の軽減と予防に有効であることが段々と分かってきました。これをスマートフォンで『ポケットに治療者を』入れられるようにしたのが、今回研究したレジトレ!®アプリです。このようなアプリを用いて、誰もがより強く、より賢く、より幸せになることが基本的人権として認められる世界を夢見て、レジトレ!®を展開して参ります。」(古川壽亮)

関連リンク

本研究の解説動画(©Kyoto University)
A new smartphone app could help fine-tune therapies for subthreshold depression - YouTube

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41591-025-03639-1

【書誌情報】
Toshi A. Furukawa, Aran Tajika, Rie Toyomoto, Masatsugu Sakata, Yan Luo, Masaru Horikoshi, Tatsuo Akechi, Norito Kawakami, Takeo Nakayama, Naoki Kondo, Shingo Fukuma, Ronald C. Kessler, Helen Christensen, Alexis Whitton, Inbal Nahum-Shani, Wolfgang Lutz, Pim Cuijpers, James M. S. Wason, Hisashi Noma (2025). Cognitive behavioral therapy skills via a smartphone app for subthreshold depression among adults in the community: the RESiLIENT randomized controlled trial. Nature Medicine.