ICT基本戦略2022

2022年3月22日役員会決定

ICT基本戦略2022策定にあたって

 このたび、京都大学戦略調整会議の議論を経て、本学のIT戦略に関わる基本的方針が策定されました。それを受けて情報環境機構において、その方針を実装するための「ICT基本戦略2022」を作成いたしました。ICT基本戦略は、過去10年間の活動を通じて大学の理念等に基づき、京都大学のすすめる研究、教育の戦略的な目標の実現をめざすもので、今後10年間を見据えた、京都大学の情報環境整備における重点方針を示しています。

 ICT基本戦略2022は、京都大学の教育研究活動の支援を、昨今の人文社会科学を含めた研究手法の大きな変化を踏まえ、データ運用、教育支援、研究支援の3分野に集中し、それを支援する情報環境機構の組織の改革方針を示しています。それぞれ、10年後に大学が直面する情報環境の課題からバックキャストすると同時に、現在の技術の延長として即応する体制を取ることを目指したものです。3つの分野における整備の概要をとりまとめました。今後、組織のあり方を含めたより詳細な検討を行い、大学の戦略に合わせたミッションを具体的に策定し、実行していく予定です。このICT基本戦略は社会の情勢や技術の最新動向を適切に捉えて改訂していきます。

 ICT基本戦略の実現は、従来の計算科学だけではなく、データ駆動科学によるオープンサイエンス実現へのフローを、個々の研究者の努力だけでなく、学内のプラットフォームとして支える情報環境の整備が必要です。情報環境機構が全学的な情報環境の整備を行える組織として適切にあるように改組することも厭わず、ICT基本戦略2022の実現に邁進いたします。

 引き続き、みなさま方のご支援、ご協力をお願いし、全ての研究者に先進的で、必要な時に必要な環境が得られる体制の実現を目指して参ります。引き続きご支援とご協力をお願い申し上げます。

京都大学情報環境機構

機構長 引原隆士

ICT基本戦略2022策定の経緯と目的

  • 本学が展開する学術のすべての分野において、研究データの管理・利活用するプラットフォームと体制を整える
  • ICTによる教育支援システムの利用の利便性、効果を踏まえ、教育用コンピュータ、学習用プラットフォーム、ソフトウェア利用、コンテンツ利用の全学的環境整備を行う
  • 新たな研究の展開を可能にする情報基盤の構築のために、現在の計算機資源に加え、新たにデータ駆動型研究のための計算機資源の整備を行う

 本学は、2013年に「京都大学ICT基本戦略」を定め、 2022年を見据えた情報環境の整備に関する基本方針を定めた。また、これに基づき、情報環境機構において、教育、研究、業務、情報基盤の4分野についての「個別戦略」と「ロードマップ」を示した。その後、情報技術や学術に関わる情報環境の変化に応じて適宜、これらを見直してきた。しかしながら、そのあり方は、基本的な必要性を示したのみで、情報環境の急速な変化による研究教育への支援に対して最新の先端的環境を提供するというものからほど遠いものであったと言える。その反省に立ち、策定を目標とした動きではなく、情報環境のあるべき姿からバックキャストして方針を策定するという考え方に立ち返り、見直す必要に迫られていた。

 ICT基本戦略2022は、第4期中期目標・中期計画期間から始まる情報戦略の方向性とその実施方針の策定において、現状維持の前提ではなく、大学として今後の投資をすべき分野を問う議論に基づくものでなければならない。ここに、同基本戦略を大学の戦略方針の議論に従い、次の目標を定めて策定するものである。それらは、①データ運用のための環境整備とシステム構築、②場所的・時間的制約のない多様な教育方法を可能にする情報環境基盤の構築、③新たな研究の展開を可能にする情報環境基盤の構築、④新たな情報環境基盤を支える組織の整備である。

 これらを目標として、大学の情報環境を整備する運営の方針を改めて作成し、以下に示す。

ICT基本戦略2022

 同基本戦略の目標とする事項について以下に概要を示す。その運用指針は別途定めるものとする。

データ運用のための環境整備とシステム構築

展開する学術全ての分野におけるオープンサイエンスへの貢献

(1) データ資産の明確化と運用ルールの確立

 本学で生み出されるデータ資産の管理を明確化し、一元管理運営する体制を整備する。国際的に高度な研究連携を目指し、学内における運用ルールを明確化し、研究成果の発信を可能にする基盤を整備する。

(2) プラットフォームの確立

 データ科学の展開を可能にする計算資源の整備を促進する。分野横断的に教育、研究を推進する、研究者の利用実態に合わせた柔軟で即効性のある基盤を整備する。

(3) 運用体制の整備と人材育成

 データ資産の明確化および運用ルールの確立のため、全学的な審議体制およびデータマネージメント体制を整備する。研究者に新たな負担を増やすことなく、自由な発想で円滑に研究に取り組むことができ、必要なデータを容易に入手かつ提供できる支援体制を提供し人材を育成する。

場所的・時間的制約のない多様な教育方法を可能にする情報環境基盤の構築

学生がおかれた条件にかかわらず、すべからく利用可能な教育環境の提供

(1) 整備方針の決定プロセスの明確化

 全学の判断を受けた方針の決定プロセスを整理する。ICTによる教育支援体制の整備を、全学の教育判断の下に行い、全学機構がその判断を支援する体制を位置づける。

(2) LMS(学習管理システム:Learning Management System)の整備

 全学のICTによる教育支援体制を一元化するための整理を行う。学外からの自由なアクセスや教育コンテンツの自由な保存と利用を可能にするシステムの整備と運用ルールの明確化を進める。さらに、教育としてのソフトウェアの全学ライセンスの運用を明確化する。

(3) 認証システムの再整備

 全学の学生の教育、教職員のe-learning 等の総合的な運用を実現するための認証システムや、リカレント教育への教育コンテンツの展開への整備を行う。

新たな研究の展開を可能にする情報基盤の構築

データ駆動型研究のための計算機資源の整備

 全ての研究領域において世界的な潮流となっている、データ駆動型研究に資する計算資源の整備を大学として整備する。従来、部局が個別に進めてきた検討を、全学的な戦略の下で統一的に行い、全学認証との連携および受益者負担の仕組みなどを整備した上で、個別研究資源投資の転換と将来利用の保証を実現する。

新たな情報環境基盤を支える組織の整備

情報環境機構のミッションの明確化と大学の戦略に基づく運営組織の整備

 データ資産の構築・運用、教育のICT化の充実、データ科学への対応等のミッションが大学の戦略の中心となる。これにより、情報基盤整備に関わってきた組織を戦略の推進組織として位置づけると共に、学内業務において情報環境機構が関わるべき業務を明確にし、人材の育成と同時に具体的な施策が実施できる体制、運用が可能な組織へと改編・整備を進める。

参考

ICT基本戦略2022(PDF)