AIによる外来カエル類の自動検出法の開発―世界自然遺産・西表島への定着を防ぐために―

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 人間によって本来の分布域外に運ばれ定着した外来種は、定着先の生物多様性に大きなダメージを与えることがあり、外来種問題の対策が世界的に課題となっています。外来種はいったん数が増えると根絶が難しく、侵入初期に発見し、増殖を防ぐことが重要です。侵入をモニタリングするための人員や予算はしばしば極めて限られていますが、近年急速に発展したAI技術を活用し、野外に設置したカメラや音声レコーダーで記録された外来種を自動検出することができれば、侵入の早期検出に大いに役立つと考えられます。

 そこで木村楓 理学研究科博士後期課程学生、福山伊吹 人間・環境学研究科博士後期課程学生(現:北海道大学日本学術振興会特別研究員(PD))、福山欣司 慶應義塾大学名誉教授の研究グループは、世界自然遺産・沖縄県西表島に定着する危険性が高い2種の外来種のカエルを鳴き声から自動で検出するAIモデルを開発しました。また性能をテストするために、一年を通じて様々な季節にスピーカーで鳴き声を流したところ、多様な背景雑音があるなかでも、AIモデルがそれらの鳴き声をほぼ正確に検出できることを確認しました。本手法を外来種調査の現場で使用し、より実践的な場面での有効性と課題を洗い出すことが次の課題です。

 本研究成果は、2025年3月4日に、国際学術誌「Biological Invasions」にオンライン掲載されました。

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西表島では、外来種であるシロアゴガエルとオオヒキガエルが近隣の石垣島からたびたび侵入している。本研究では侵入の早期発見に役立てるため、これら2種の鳴き声を検出するAIを開発した。(撮影:福山伊吹、木村楓)

研究者のコメント

「我々はふだんフィールドで両生類の生態を研究していますが、そこで培った知識と技術を活かして外来種問題に貢献しようと本研究を始めました。調査で訪れた春の夜の西表島では、これまで見たこと無いほど沢山のカエルが生息している水田があり、それを食べに来たヘビも数多く、その密度に圧倒されました。こういった環境が将来にも残ることを望みます。」(木村楓)
書誌情報
【書誌情報】
Kaede Kimura, Ibuki Fukuyama, Kinji Fukuyama (2025). Deep learning-based detector of invasive alien frogs, Polypedates leucomystax and Rhinella marina, on an island at invasion front. Biological Invasions, 27, 95.