「オートファジー」が植物の接木に関与

ターゲット
公開日

 野田口理孝 理学研究科教授(兼:名古屋大学特任教授)、黒谷賢一 同准教授(研究当時:名古屋大学特任准教授)、岡田健太郎 名古屋大学特任助教、吉本光希 明治大学教授、豊岡公徳 理化学研究所上級技師らの研究グループは、植物に接木を実施したときに生じる傷の修復過程にオートファジーが関与していることを発見しました。

 接木は二つ以上の植物個体を人為的操作によってつなぎあわせて育成する、有史以前より利用されてきた農業技術です。その成立には個体間の自他認識、傷口からの病原体等の侵入抑制、組織の脱分化、カルス形成、細胞間の癒合、通道組織の再構成など、多数の生理応答が関わっていると考えられますが、まだまだ不明な点が多く残されています。今回、傷口の修復過程において、特に切断面の上側の細胞群がオートファジーによる自食作用で分解を受けることが新たなカルスの形成を促し、接木の成立に寄与することを示しました。これにより接木や、植物の傷修復時に起こる生理現象の一端が解明され、植物の傷害応答についての理解や、接木の農業利用のさらなる応用につながることが期待されます。

 本研究成果は、2025年4月12日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
右上は接木部分の横断面の電子顕微鏡像。赤い矢頭がオートファゴソームを表す。下は接木時のオートファジー機構の模式図。
研究者のコメント
「オートファジーの植物における意義などは、まだ分かっていないことも多くあります。本研究は接木の成立するメカニズムを知りたいという動機で始まりましたが、その現象は単に農業技術にとどまらず、植物が外部から切断等の傷を受けた際にそれを克服するという生存戦略に本質的に関わっている生理現象の探求につながっていることがわかってきました。」(黒谷賢一)
詳しい研究内容について
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-025-58519-6

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/293457

【書誌情報】
Ken-ichi Kurotani, Daiki Shinozaki, Kentaro Okada, Ryo Tabata, Yaichi Kawakatsu, Ryohei Sugita, Yuki Utsugi, Koji Okayasu, Moe Mori, Keitaro Tanoi, Yumi Goto, Mayuko Sato, Kiminori Toyooka, Kohki Yoshimoto, Michitaka Notaguchi (2025). Autophagy is induced during plant grafting to promote wound healing. Nature Communications, 16, 3483.