糖尿病性網膜症や新生血管型加齢黄斑変性、未熟児網膜症などの網脈絡膜血管障害は、世界の失明原因の上位を占めています。これらの疾患では組織炎症を伴い、細胞傷害だけでなく組織リモデリングに関連していると考えられていますが、その詳細は不明でした。
畑匡侑 医学部附属病院特定講師(研究当時:カナダ・モントリオール大学(University of Montreal)博士研究員)、Przemyslaw Sapieha モントリオール大学教授らの研究グループは、ある特定の自然免疫細胞は病的血管新生を増強させる一方で、別の自然免疫細胞は新生血管を排除する役割があることを明らかにしました。また、本研究では、コルチコステロイドなどの広域スペクトル抗炎症薬の投与が病的血管新生を鈍化させる一方で、投与時期によっては網膜の内在性の血管修復メカニズムを損なう可能性があることも明らかにしています。
本研究成果は、2024年12月18日に、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1073/pnas.2411640121
【書誌情報】
Masayuki Hata, Maki Hata, Agnieszka Dejda, Frédérique Pilon, Roberto Diaz-Marin, Frédérik Fournier, Jean-Sebastien Joyal, Gael Cagnone, Yotaro Ochi, Sergio Crespo-Garcia, Ariel M. Wilson, Przemyslaw Sapieha (2024). Corticosteroids reduce pathological angiogenesis yet compromise reparative vascular remodeling in a model of retinopathy. Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), 121, 52, e2411640121.