私たちの認知パフォーマンスは、観衆の存在に大きく影響されることがあります。この現象は、他人の目や評判を気にするヒトの特性と関連付けられることが多いですが、ヒト以外の動物とどの程度共有されているかは不明でした。
クリステン・リン 野生動物研究センター博士課程学生、山本真也 高等研究院准教授、村松明穂 秋田県立大学助教の研究チームは、チンパンジーにおけるこのような観衆効果を調べるため、難易度や認知的要求度の異なる3種類の数認知課題に対する6頭のチンパンジーのパフォーマンスを、観衆の構成を変化させながら6年間にわたって記録しました。その結果、チンパンジーのパフォーマンスはその場にいる観衆の数や種類に影響されることがわかりました。最も難しい課題では、実験者の数が増えるにつれてパフォーマンスが向上しましたが、最も簡単な課題では、慣れ親しんだ観衆の数が増えるにつれてパフォーマンスが低下しました。このことは、認知処理に対する観衆の影響がチンパンジーにも見られることを示唆しており、この特性の進化的ルーツは、ヒトにおいて評判に基づく規範社会が発達する以前にまでさかのぼる可能性があります。
本研究成果は、2024年11月8日に、国際学術誌「iScience」に掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.111191
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/290803
【書誌情報】
Christen Lin, Akiho Muramatsu, Shinya Yamamoto (2024). Audience presence influences cognitive task performance in chimpanzees. iScience.
朝日新聞(11月28日夕刊 8面)に掲載されました。