遺伝子変異が原因で起きる遺伝性疾患は病気が進行すると治療が難しくなることが多く、早期に見つけて治療を開始することが重要です。日本では全ての赤ちゃんを対象として「新生児マススクリーニング」という事業が実施されており、遺伝性疾患をもつ子どもを早期に発見し、早期に治療することで将来的な障害を予防する事に役立っています。しかし、現行の方法では診断できる病気が限られており、従来の検査と並行して検査でき、より多くの病気に対応できる新しい検査法の開発が求められていました。
八角高裕 医学研究科特定教授と柴田洋史 同特定病院助教、小原收 かずさDNA研究所副所長、川島祐介 同グループ長、中島大輔 同研究員、紺野亮 同特任研究員らの共同研究グループは、新生児マススクリーニングに使われている乾燥ろ紙血を用いてプロテオミクスという解析を行うことで、特定の免疫系遺伝性疾患の患者の乾燥ろ紙血において、病気に関係する蛋白質の顕著な減少を検出できることを発見しました。今回の発見は、他の遺伝性疾患にも応用することができ、将来的には生命に関わる遺伝性疾患をもつ多くの赤ちゃんを診断し、発症前に適切な治療を行うことができるようになると期待されます。
本研究成果は、2024年10月25日に、国際学術誌「Journal of Clinical immunology」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1007/s10875-024-01821-7
【書誌情報】
Hirofumi Shibata, Daisuke Nakajima, Ryo Konno, Atsushi Hijikata, Motoko Higashiguchi, Hiroshi Nihira, Saeko Shimodera, Takayuki Miyamoto, Masahiko Nishitani-Isa, Eitaro Hiejima, Kazushi Izawa, Junko Takita, Toshio Heike, Ken Okamura, Hidenori Ohnishi, Masataka Ishimura, Satoshi Okada, Motoi Yamashita, Tomohiro Morio, Hirokazu Kanegane, Kohsuke Imai, Yasuko Nakamura, Shigeaki Nonoyama, Toru Uchiyama, Masafumi Onodera, Ryuta Nishikomori, Osamu Ohara, Yusuke Kawashima, Takahiro Yasumi (2024). A Non-targeted Proteomics Newborn Screening Platform for Inborn Errors of Immunity. Journal of Clinical immunology, 45, 33.