ポリジェニックリスクスコア×機械学習で紐解く生活習慣病の遺伝的リスクと予防効果との関係

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 井上浩輔 白眉センター/医学系研究科特定准教授、内藤龍彦 大阪大学助教(現:米国マウントサイナイ医科大学(Icahn School of Medicine at Mount Sinai)博士研究員)、岡田随象 同教授(兼:理化学研究所チームリーダー、東京大学大学教授)らの研究グループは、機械学習とポリジェニックリスクスコアを用いて、冠動脈疾患、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧症の4つの生活習慣病とその主要なリスク因子である喫煙や肥満との関係が、その疾患のポリジェニックリスクスコアによってどのように変化するかを評価しました。その結果、「冠動脈疾患の遺伝的リスク」と「喫煙の改善による疾患予防効果」、および「2型糖尿病の遺伝的リスク」と「肥満の改善による疾患予防効果」にそれぞれ高い正の相関があることが解明されました。一方、他の生活習慣病とリスク因子の関係においては、遺伝的リスクが高い人たちが必ずしもリスク因子の改善による予防効果が高いわけではなく、遺伝的リスクが低くてもリスク因子の改善による高い予防効果が期待される人たちが多く存在する可能性があることも示されました。

 本研究成果は、2024年9月20日に、国際学術誌「Communications Medicine」にオンライン掲載されました。

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本研究の概要図:因果推論手法のひとつ因果フォレストを用いてポリジェニックリスクスコアと生活習慣病の予防効果との関係を評価した
研究者のコメント
「ポリジェニックリスクスコアに関する研究は、予測精度の評価や手法開発に焦点を当てたものが多く、スコアの高い人に対して治療や予防医療を集中的に行うべきかどうかという問題については多くは検討されていない印象でした。本研究が、そのような課題に対して新しい視点を提供し、遺伝情報を活用した将来的なゲノム個別化医療の実現に貢献できれば幸いです。本研究はバイオバンク・ジャパンとUKバイオバンクの保有するゲノム・臨床情報を活用することで実現できました。両バイオバンクの関係者の皆さまをはじめ、すべての共同研究者、研究支援機構、そして検体をご提供いただいた方々に深く感謝を申し上げます。」(内藤龍彦)
研究者情報