福井県嶺北地方に生息する新種レイホクナガレホトケドジョウの記載―新たに記載された種とその保全に向けた今後の課題―

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 ホトケドジョウ属は小型の淡水魚で、日本には在来種のホトケドジョウ、エゾホトケドジョウ、ナガレホトケドジョウ、トウカイナガレホトケドジョウの4種が分布しています。その中でナガレホトケドジョウは北陸、近畿、中国、四国地方の河川の源流域に生息し、種内に遺伝的に異なる4つの集団が見つかっていました。

 この度、片山優太 理学研究科修士課程学生、澤田直人 同博士課程学生(兼:東京大学特任研究員)(現:東京大学特任研究員)の研究グループは、遺伝解析と形態解析によって、福井県嶺北地方でナガレホトケドジョウ嶺北集団として知られていたホトケドジョウ類が独立種であることを明らかにし、新種「レイホクナガレホトケドジョウ Lefua nishimurai」として記載しました。本種は次の5つの特徴で同属の他種と識別されます。(1)眼が頭部背側に位置する、(2)吻端と眼の間に細い黒色縦帯がある、(3)体側、背鰭、尾鰭に小さな暗色斑がある、(4)背鰭と眼径が小さい、(5)尾鰭基底部の上下に黒色斑がある。本種は同属他種と比較して頭部の形態が異なっており、本種は嶺北地方の狭い範囲からしか見つかっておらず、個体数も非常に少ないため、今後更なる分布範囲と生態に関する調査を進め、保全していくべき状態にあると考えられます。

 本研究成果は、2024年9月25日に、国際学術誌「Evolutionary Systematics」にオンライン掲載されました。

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新種記載を行ったレイホクナガレホトケドジョウLefua nishimurai(撮影:片山優太)
研究者のコメント
「レイホクナガレホトケドジョウは山奥の河川の数地点にしか生息していないため、生息地の探索や生体のサンプリングにとても苦労しました。現地調査で出逢うことができたレイホクナガレホトケドジョウの個体数は驚くほど少なく、僅かな環境変化で絶滅に至ってしまうのではないかと危惧しています。この可憐な淡水魚が穏やかに暮らせるよう研究を進め、保全対策を講じていく所存です。」(片山優太)
研究者情報
研究者名
片山 優太