ゲノム解析から探る「幻の怪魚」アカメの進化と生存の歴史


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 中山耕至 農学研究科助教、橋口康之 大阪医科薬科大学准教授、髙橋洋 水産研究・教育機構教授、竹下直彦 同教授、三品達平 九州大学助教(兼:理化学研究所客員研究員)、武島弘彦 福井県里山里海湖研究所研究員、田上英明 水産庁博士(研究当時:水産研究・教育機構主任)からなる研究グループは、南日本の太平洋岸に分布する日本固有の大型魚類である「アカメ」の全ゲノム解析を行い、本種の遺伝的多様性が全体的にきわめて低く、少ない個体数で長期間存続してきたこと、それを可能にしたメカニズムとして免疫などに関わる一部の遺伝子に一定の多様性が保たれていることなどを明らかにしました。

 この研究の成果は、未だ謎に包まれた存在であるアカメの進化史についての理解を進めるとともに、その保全施策への応用が期待されます。

 本研究成果は、2024年8月7日に、国際学術誌「Genome Biology and Evolution」にオンライン掲載されました。

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アカメ(幼魚)(撮影:高橋洋) 
研究者のコメント

「私たちの研究により、ゲノム解析を通じて、アカメの進化史の一端を知ることができました。また免疫系の遺伝子など、多様性が個体の生存にとって重要な遺伝子は一定の変異を保っているものの、アカメの有効集団サイズはきわめて小さいため、多くの有害変異がゲノムに蓄積している可能性があります。アカメの稚魚の生育に適した環境である河口のアマモ場は高知・宮崎ともに減少しており、アカメの存続は予断を許さない状況です。したがって、その生息環境とともに保全を着実に進めていくことが重要です。」

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1093/gbe/evae174

【書誌情報】
Yasuyuki Hashiguchi, Tappei Mishina, Hirohiko Takeshima, Kouji Nakayama, Hideaki Tanoue, Naohiko Takeshita, Hiroshi Takahashi (2024]). Draft Genome of Akame (Lates Japonicus) Reveals Possible Genetic Mechanisms for Long-Term Persistence and Adaptive Evolution with Low Genetic Diversity. Genome Biology and Evolution, 16, 8, evae174.