新型コロナウイルスの増殖に重要な宿主因子の発見―新たな治療標的への期待―

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 酒井まどか 医生物学研究所特定助教、牧野晶子 同准教授らの研究グループは、CRISPR-Cas9を用いたヒト全ゲノムスクリーニングにより、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖に重要な宿主因子としてTRIM28、TRIM33、EHMT1、EHMT2を同定しました。同定した4つの遺伝子をノックアウトした細胞を用いた解析により、TRIM28はSARS-CoV-2の粒子形成、TRIM33、EHMT1、EHMT2は同ウイルスの転写または複製過程に関与することが示されました。またEHMT1/2の選択的阻害剤であるUNC0642は同ウイルスの増殖を著しく抑制し、ハムスターモデルにおいても有効性を示しました。この発見は、新型コロナウイルスの新たな治療法の開発に貢献することが期待されます。

 本研究成果は、2024年7月7日に、国際学術誌「iScience」にオンライン掲載されました。

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SARS-CoV-2増殖環における宿主因子の役割とEHMT1/2阻害剤によるウイルス増の抑制
研究者のコメント
「パンデミックが起こり世界中の研究者が凄まじいスピードでこのウイルスの詳細を解明していく中で、本研究に着手しました。研究規模の違いに気後れすることもありましたが、ウイルス学で初学で習う、ウイルス感染による細胞変性効果の観察に立ち返り、ウイルス精製というちょっとした工夫から先行研究とは異なる研究結果を得られた時は達成感がありました。本研究成果が今すぐ社会の役に立つわけではありませんが、予測不能な感染症に対する多様な戦略の一助となることを期待しています。」(牧野晶子)
研究者情報
研究者名
酒井 まどか
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