棒状粒子は、球状粒子に比べマクロファージ捕捉を回避できる

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 安藤満 医生物学研究所助教、西村智貴 信州大学助教(科学技術振興機構創発研究者)、坂本悠輔 同大学院生、福島丈吉 同大学院生、藤井翔太 北九州市立大学特任講師、高野心 同大学院生、古寺哲幸 金沢大学教授らの共同研究グループは、ナノ粒子のアスペクト比の僅かな違いがマクロファージの取り込み量に影響を与えることを明らかにしました。

 マクロファージは免疫細胞の一種で、死滅細胞や異物を排除する機能を担っています。例えば、くすりを疾患部位に届ける薬物運搬体を体内に投与しても、マクロファージに捕捉されてしまい、その多くが目的の部位に到達しないことが知られていました。マクロファージの捕捉は、捕捉される粒子の形に依存することが報告されていましたが、具体的にどの形状がマクロファージからの捕捉を逃れやすいかという知見はありませんでした。そこで、本研究グループは、両親媒性グラフトポリマーの自己組織化を用いて異なるアスペクト比のナノ粒子を作製し、マクロファージに対する取り込みを調べたところ、アスペクト比1の球状粒子は容易に取り込まれるのに対し、アスペクト比2程度の棒状粒子が最も取り込まれにくいことが明らかになりました。また、この棒状粒子は球状粒子に比べて血中でより長く留まることも明らかになりました。この結果は、薬物運搬体の新たな設計指針になると期待されます。

 本研究成果は、2024年4月25日に、国際学術誌「Nano Letters」にオンライン掲載されました。

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マクロファージが球状粒子を取り込む様子の概念図
研究者のコメント

「この研究を始めた頃は、異なる形のナノ粒子の作り分けができずに苦労しました。しかし、様々な試行錯誤を行うなかで、表面物性がほぼ同一の棒状粒子と球状粒子を作製でき、マクロファージへの取り込みの違いを明らかにすることにつながりました。今後は、本研究で得られた知見が薬物運搬キャリアの新たな設計指針の一助になることを期待しています。」(坂本悠輔)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1021/acs.nanolett.4c01054

【書誌情報】
Yusuke Sakamoto, Shota Fujii, Shin Takano, Jokichi Fukushima, Mitsuru Ando, Noriyuki Kodera, and Tomoki Nishimura (2024). Manipulation of Macrophage Uptake by Controlling the Aspect Ratio of Graft Copolymer Micelles. Nano Letters, 24, 19, 5838-5846.

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