てんかんは、あらゆる年代に起こる脳の病気で、100人に1人、すなわち約5千万人の患者が世界中にいます。一部のてんかん患者では脳の中のてんかん焦点を取り除く焦点切除手術によって、てんかん発作が消失・改善します。てんかんの専門家たちは、症状や検査結果など多くの要素から、各患者に手術が適しているかを考えます。
池田昭夫 医学研究科特定教授、下竹昭寛 医学部附属病院助教(病院講師)、戸島麻耶 同客員研究員らの医学部附属病院てんかん診療支援センター研究グループは、てんかん患者において焦点切除手術が必要かどうかを簡単に評価する「特異的一貫性スコア」(Specific Consistency Score、SCS)を発案しました。SCSは、まずてんかん焦点を想定し、症状や各種検査の特異的所見が多いほど高い点数になります。過去に、難治てんかんにより本学医学部附属病院で焦点切除手術を検討された患者にSCSをつけたところ、焦点切除手術を行った患者、手術後にてんかん発作が大きく改善した患者でSCSは高い点数となりました。SCSはてんかん患者に対して焦点切除手術を行うかを適切に判断する指標となり、てんかんを専門とする・しないにこだわらず、世界中の施設において簡便に利用できると考えられます。
本研究成果は、2024年3月12日に、国際学術誌「Epilepsia」にオンライン掲載されました。
「てんかん外科手術は、抗発作薬で発作が止まらない患者さんで発作が消失・改善する治療法で、内科系・外科系のてんかん専門医が一緒になって手術前の詳細な多くの検査を積み重ねて外科手術の成功率をあらかじめ検討します。今回のSCSは、患者さんの複雑多彩なデータを『特異度重視』の方針で外科手術の成功率を明確に予想できる方法です。国内外の多施設で多くの患者さんのお役に立てることを期待します。」(池田昭夫)
【DOI】
https://doi.org/10.1111/epi.17945
【書誌情報】
Maya Tojima, Akihiro Shimotake, Shuichiro Neshige, Tadashi Okada, Katsuya Kobayashi, Kiyohide Usami, Masao Matsuhashi, Masayuki Honda, Hirofumi Takeyama, Takefumi Hitomi, Takeshi Yoshida, Atsushi Yokoyama, Yasutaka Fushimi, Tsukasa Ueno, Yukihiro Yamao, Takayuki Kikuchi, Takao Namiki, Yoshiki Arakawa, Ryosuke Takahashi, Akio Ikeda (2024). Specific consistency score for rational selection of epilepsy resection surgery candidates. Epilepsia.