現代社会において、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を実現するための取り組みの重要性はますます高まっています。関口倫紀 経営管理研究部教授とテキサス大学リオグランデバレー校の2名の研究者は、異なる社会集団に属する従業員が混在する組織においてDE&Iを実現するために重要な要素として「組織的エンベッデッドネス」と「インクルーシブ・リーダーシップ」に着目しました。組織的エンベッデッドネスとは、従業員が組織という社会ネットワークの中に埋め込まれていくプロセスを示すもので、インクルーシブ・リーダーシップは、あらゆるタイプの多様なメンバーをすべて組織内に包摂することを志向するリーダーシップです。関口教授らが開発した理論モデルでは、ダイバーシティの度合いが異なるステージの組織(画一型、多元型、多文化型)では、組織的エンベッデッドネスの形成プロセスを促進したり阻害したりするメカニズムが異なることを理論的に明らかにしました。そのうえで、DE&Iを実現するため、組織的エンベッデッドネスを高めることを通してあらゆる社会集団に属する従業員の定着と活躍を促進するためには、組織のダイバーシティのステージに合ったインクルーシブ・リーダーシップのあり方が求められることを明らかにしました。
本研究成果は、2023年7月19日に、国際学術誌「Journal of Management Studies」にオンライン掲載されました。
「さまざまな社会集団に属する多様な従業員の定着と活躍を促進することでDE&Iを実現したいと考える組織の管理職やリーダーは、従業員が異なる社会集団に属している場合、組織の多様性に起因する様々な要因によって、組織的エンベッデッドネスを高めるプロセスのスピードや度合いが異なることを理解すべきです。例えば、マイノリティとしての社会集団に属する従業員は、マジョリティとしての社会集団に属する従業員よりも組織的エンベッデッドネスが高まりにくいため、結果的にそのような社会集団に属する従業員を組織から排除することにつながりかねません。何が組織的エンベッデッドネスを促進し、何がその障害となるのかを理解することで、従業員の定着プロセスを加速させ、貴重で多様な人材を確保しやすくなります。しかし、それを可能にするインクルーシブ・リーダーシップのあるべき姿は、組織のダイバーシティの段階によって異なることも理解する必要があるのです。」
【DOI】
https://doi.org/10.1111/joms.12984
【書誌情報】
Debjani Ghosh, Jorge A. Gonzalez, Tomoki Sekiguchi (2023). Different Feathers Embedding Together: Integrating Diversity and Organizational Embeddedness. Journal of Management Studies.