テレスコープアレイ実験史上最大のエネルギーをもつ宇宙線を検出

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 宇宙から降り注いでいる高エネルギーの粒子(宇宙線)の中には、非常に高いエネルギーの宇宙線がごく稀に存在しており、宇宙におけるもっとも激烈な物理現象と関連していると考えられています。宇宙線は荷電粒子であるため宇宙磁場で曲げられますが、非常に高いエネルギーの宇宙線は磁場で曲げられにくく、到来方向が発生源を指し示す「次世代天文学」となることが期待されています。

 藤井俊博 白眉センター/理学研究科特定助教(現:大阪公立大学准教授)、常定芳基 大阪公立大学教授、荻尾彰一 東京大学教授、﨏隆志 同准教授、佐川宏行 同シニアフェロー、樋口諒 理化学研究所基礎科学特別研究員、木戸英治 同研究員、長瀧重博 同主任研究員(数理創造プログラム副プログラムディレクター)、多米田裕一郎 大阪電気通信大学准教授、冨田孝幸 信州大学助教、池田大輔 神奈川大学特別助教、有働慈治 同准教授らの国際共同研究グループは、米国ユタ州で稼働中の最高エネルギー宇宙線観測実験「テレスコープアレイ実験」にて、2021年5月27日に極めて高いエネルギー(2.44×10の20乗電子ボルト = 244エクサ電子ボルト)をもった宇宙線の検出に成功しました。

 テレスコープアレイ実験は2008年から現在までの15年以上にわたり、最高エネルギー宇宙線の定常観測を続けています。今回検出された宇宙線は、テレスコープアレイ実験の観測の中でもっともエネルギーが高く、1991年に検出された「オーマイゴッド粒子」と呼ばれる宇宙線に匹敵するエネルギーをもちます。さらに、この宇宙線が到来した方向には候補となる有力な天体が見つからず、未知の天体現象や標準理論を超えた新物理起源の可能性も示唆されます。

 本研究成果は、2023年11月24日に、国際学術誌「Science」にオンライン掲載されました。

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2021年5月27日にテレスコープアレイ実験で検出された極めて高いエネルギーの宇宙線を地表粒子検出器の信号情報から描画したイメージ図(画像提供: 大阪公立大学/京都大学L-INSIGHT/Ryuunosuke Takeshige)
研究者のコメント

「この極めて高いエネルギーの宇宙線を初めて見つけたとき、かつてないエネルギーの値が表示されていたため、何かの間違いだろうと思いました。その後、到来方向に候補天体が見つけられず残念に思うと同時に、ではこの宇宙線はどこから来たのか、という新しい謎が見つかったワクワク感を覚えています。今後は、稼働中のテレスコープアレイ実験拡張計画や、次世代実験によって極高エネルギー宇宙線の発生源を明らかにしたいと考えています。」(藤井俊博)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1126/science.abo5095

【書誌情報】
Telescope Array Collaboration (2023). An extremely energetic cosmic ray observed by a surface detector array. Science, 382(6673), 903-907.

メディア掲載情報

毎日新聞(11月25日 25面)および朝日新聞(12月19日 24面)に掲載されました。