デジタルプラットフォーム分析の新しい枠組み―マルチ・ホーミングを考慮した寡占モデル―

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 21世紀になって定着したデジタルプラットフォームという事業形態は、私たちの生活に利便性をもたらしてきたものの、近年では、特定の数社の事業者に集中することによる弊害が懸念されています。情報通信技術の進展を念頭に置いた市場や競争の分析を進展させていくことの重要性は高まっていると言えるでしょう。

 このような背景のもと、安達貴教 経営管理研究部・経済学研究科准教授、佐藤進 一橋大学講師、マーク・トレンブリィ 米国ネバダ州立大学ラスベガス校助教からなる共同研究グループは、一つのプラットフォームだけを利用(シングル・ホーミング)する消費者と、複数のプラットフォームを同時並行的に利用(マルチ・ホーミング)する消費者の双方がいるという現実的な状況を考察することによって、今後の政策的議論につながる新たな枠組みの提示に成功しました。

 本研究成果に基づく二編の学術論文は、国際学術誌「International Journal of Industrial Organization」(2023年7月17日)および同「Journal of Industrial Economics」(2023年10月9日)に、オンライン掲載されました。

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マルチ・ホーミングの消費者(左)とシングル・ホーミングの消費者(右)(イメージ)[作画:トライス]
研究者のコメント

「Windows 95が発売された1995年からおよそ30年が経過しました。人類史の位置付けにおいて、社会のあらゆる側面におけるデジタライゼーション(デジタル化)は着実に定着してきたものと言って良いでしょう。最近では、プラットフォームだけでなく、生成AIを巡る議論も活発化しています。このように、科学技術の発展状況なども念頭に置きつつ、経済社会の根本的機能を司る市場と競争に関して理解し、そして評価しようとする研究分野が、私が関心を抱いている『不完全競争の経済学』です。今後とも、『不完全競争の経済学』への学術的貢献を一段と加速させるに留まらず、その社会的還元に幾ばくかでも寄与できればと考えています。」(安達貴教)

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