タイヌビエは水田に生える防除が難しい強害雑草です。近年は国内外で複数の除草剤に抵抗性を持つ集団も見つかっており、その防除はより困難になっています。タイヌビエによる農業被害を防ぐためには研究の基盤となるゲノム情報が必要となります。しかしタイヌビエは2つの種が交雑によって生じた4倍体で、ゲノムの構造が複雑であるため、その解読は困難でした。
この度、岩上哲史 農学研究科助教、白澤健太 かずさDNA研究所室長、佐藤光彦 同研究員、保田謙太郎 秋田県立大学准教授らの研究グループは、タイヌビエのゲノムを高精度に解読することに成功しました。解読されたゲノム情報を利用することで、除草剤抵抗性の獲得メカニズムの解析や、新たな除草剤の開発、耕地の適切な管理方法の開発が進展することが期待されます。
本研究成果は、2023年11月7日に、国際学術雑誌「DNA Research」にオンライン掲載されました。
「ゲノムを解読したタイヌビエは、アメリカで採取された除草剤抵抗性のタイヌビエです。15年間以上研究材料に用いてきましたが、ゲノム情報がないことで、多くの苦労がありました。今後は解読したゲノム情報を元に研究を大きく加速させ、タイヌビエがなぜ管理が難しい雑草なのか、その本質を明らかにしていきたいと考えています。」(岩上哲史)
【DOI】
https://doi.org/10.1093/dnares/dsad023
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/286022
【書誌情報】
Mitsuhiko P Sato, Satoshi Iwakami, Kanade Fukunishi, Kai Sugiura, Kentaro Yasuda, Sachiko Isobe, Kenta Shirasawa (2023). Telomere-to-telomere genome assembly of an allotetraploid pernicious weed, Echinochloa phyllopogon. DNA Research, 30(5):dsad023.