近藤尚己 医学研究科教授、荒川裕貴 東京大学博士課程学生(京都大学特別研究学生)らの研究グループは、妊娠中や産後の女性が子育て中に生じる不安や疑問を、自身のスマートフォンを用いて産婦人科医・小児科医・助産師に相談できる、オンライン健康医療相談サービスを無料で利用できる環境にあった女性は、そうでない女性に比べて産後うつのリスクが約3分の2程度に抑えられたことを明らかにしました。
本研究では、横浜市在住の妊婦734人を対象にオンライン健康医療相談サービスを利用できる者をランダムに割り当て、産後うつリスクを比較しました。この結果、産後3ヶ月時点の産後うつ高リスク者の割合は、オンライン健康医療相談サービスを利用できるグループが15.2%(47人/310人)であり、利用できないグループの22.8%(75人/329人)に対して産後うつリスクが約3分の2程度(相対リスク0.67)であったことが明らかになりました。この違いは、研究参加者の収入や学歴などの社会経済背景によらずみられました。
本研究から、テクノロジーを用いたオンライン健康医療相談サービスを提供することで、これまで未解決だった予防的ヘルスケアへの物理的・心理的なアクセス障壁を取り除き、産後うつリスクを減らすことができた可能性が考えられます。
本研究成果は、2023年6月26日に、国際学術誌「BMC medicine」に、オンライン掲載されました。
「オンライン健康医療相談サービスは、自宅から好きなタイミングで相談したいことを相談でき、医療専門職から個別化されたサポートを受けられる点が、産後うつリスクの低下に効果的だったと考えています。妊娠中や産後の女性を始めとして、健康状態やメンタルヘルスに悩む人々には、何らかのアクセス障壁のせいで支援源が存在していても届かない状況があり、テクノロジーを用いてそれらの障壁を取り除くことがメンタルヘルスの改善につながる可能性を示すことができて嬉しく思います。」(荒川裕貴)
【DOI】
https://doi.org/10.1186/s12916-023-02918-3
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/284597
【書誌情報】
Yuki Arakawa, Maho Haseda, Kosuke Inoue, Daisuke Nishioka, Shiho Kino, Daisuke Nishi, Hideki Hashimoto, Naoki Kondo (2023). Effectiveness of mHealth consultation services for preventing postpartum depressive symptoms: a randomized clinical trial. BMC Medicine, 21:221.