ゼロ磁場下において超伝導ダイオード効果の磁化制御に成功-エネルギー非散逸な不揮発性デバイスへの応用に期待-

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 成田秀樹 化学研究所特定助教、小野輝男 同教授らの研究グループは、島川祐一 同教授、菅大介 同准教授、栁瀬陽一 理学研究科教授、石塚淳 新潟大学助教らと共同で、超伝導体、強磁性体、重金属を含む極性超格子において、ゼロ磁場で一方向のみに電気抵抗がゼロとなる超伝導ダイオード効果の効率が40%を超えることを観測し、さらに超伝導ダイオード効果の磁化制御に成功しました。

 ダイオード効果は、順方向に電流をよく流す一方で逆方向にはほとんど流さない効果であり、整流器等に広く用いられています。しかし、超伝導ダイオード効果の実現には外部磁場や磁性制御、あるいは特殊な結晶対称性が必要だと考えられており、さらに効率の改善も必要であるため、実用化には限界がありました。

 本研究では、ニオブ(Nb)層、バナジウム(V)層、タンタル(Ta)層、プラチナ(Pt)層、 鉄(Fe)層を含む極性構造を有した超格子を利用し、ゼロ磁場下において超伝導ダイオード効果の磁化制御に成功しました。この成果は、超低消費電力の新しい不揮発性メモリや論理回路の実現へ貢献することが期待されます。

 本研究成果は、2023年7月6日に、国際学術誌「Advanced Materials」にオンライン掲載されました。

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研究者コメント

「現在、超伝導ダイオード効果の応用に向けた研究や、その起源の解明に関して様々な実験・理論研究が国内外で展開されています。本研究で作製した強磁性体、超伝導体、重金属を含む多元素超格子では、空間反転対称性が破れており、それぞれの元素の持つ機能を複合化することによって、通常の超伝導体にはないような新たな機能性を付与することができます。このような超伝導体では、理論研究によると非従来型の超伝導状態が実現されている可能性があり、今後は超伝導ダイオード効果のデバイスへの応用に加え、超伝導ダイオード効果を利用した新奇電子相の解明に取り組んでいきたいと考えています。」(成田秀樹) 

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1002/adma.202304083

【書誌情報】
Hideki Narita, Jun Ishizuka, Daisuke Kan, Yuichi Shimakawa, Youichi Yanase, Teruo Ono (2023). Magnetization Control of Zero-Field Intrinsic Superconducting Diode Effect. Advanced Materials, 35(40):2304083.