シロアリが木を食べ、それを腸内微生物の働きによって栄養に変えて生活していることはよく知られています。しかし、木を食べるのは専ら働きアリの仕事で、王や女王は働きアリから特殊な食べ物を与えられて、繁殖に専念しています。そして、その特別食(本研究でロイヤルフードと命名)によって王や女王は何十年も活発な繁殖を続けることが出来ます。このロイヤルフードが一体どのような成分なのか、これまで謎に包まれていました。
松浦健二 農学研究科教授、高田守 同助教、田﨑英祐 同日本学術振興会特別研究員(現:新潟大学助教)、三高雄希 同特定研究員(現:日本学術振興会海外特別研究員)らの研究グループは、浜松医科大学との共同研究により、ヤマトシロアリを用いて王と女王の給餌物の採取と分析に成功し、世界で初めてシロアリのロイヤルフードの成分を特定しました。
本研究成果は、2023年7月4日に、国際学術誌「PNAS Nexus」にオンライン掲載されました。
「本研究は、最先端のシロアリの研究技術を有するチームと最先端の質量分析技術を有するチームの共同によって、世界で初めてシロアリのロイヤルフードの採取や成分特定に成功しました。特に働きアリが王と女王を識別して食べ物を選択的に与えており、王食と女王食が異なる組成であることは、大きな発見でした。」
【DOI】
https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgad222
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/284168
【書誌情報】
Eisuke Tasaki, Yuki Mitaka, Yutaka Takahashi, A S M Waliullah, Zinat Tamannaa, Takumi Sakamoto, Ariful Islam, Masaki Kamiya, Tomohito Sato, Shuhei Aramaki, Kenji Kikushima, Makoto Horikawa, Katsumasa Nakamura, Tomoaki Kahyo, Mamoru Takata, Mitsutoshi Setou, Kenji Matsuura (2023). The royal food of termites shows king and queen specificity. PNAS Nexus, 2(7):pgad222.
京都新聞(8月24日夕刊 7面)に掲載されました。