難治性悪性脳腫瘍の中性子捕捉治療に有望な薬剤の開発-従来の1/50の投与量で高い腫瘍治療効果を実現-

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 鈴木実 複合原子力科学研究所教授、中村浩之 東京工業大学教授、川端信司 大阪医科薬科大学准教授、中井啓 筑波大学准教授らの研究グループは共同で、悪性脳腫瘍に高い治療効果を有する中性子捕捉療法用新規ホウ素薬剤PBC-IPの開発に成功しました。

 ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、がん細胞のみを選択的に殺傷する治療法として近年注目を集めています。特に、悪性度の高いグリオーマに代表される難治性悪性脳腫瘍の新たな治療法としてBNCTには大きな期待が寄せられている一方、グリオーマ細胞に高い集積性を示すホウ素薬剤の開発が急務となっていました。

 本研究では、グリオーマ細胞に高発現している葉酸受容体αのリガンド、アルブミンリガンド、ホウ素クラスターが連結されたホウ素薬剤「PBC-IP」を新たに開発しました。PBC-IPは、臨床用ホウ素薬剤の10~20倍のホウ素送達能を持つとともに、顕著な腫瘍増殖抑制効果が得られました。また、convection-enhanced delivery(CED)法によってPBC-IPをマウス脳内患部に局所投与し、中性子照射実験を行ったところ、既存法と比べてマウスの生存期間が増加することがわかりました。さらに、通常のホウ素薬剤投与量の1/50の投与量で高い治療効果が得られることから、難治性悪性脳腫瘍の治療法の開発において、極めて大きなインパクトをもたらすことが期待されます。

 本研究成果は、2023年6月29日に、国際学術雑誌「Journal of Controlled Release」に掲載されました。

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Pteroyl-closo-dodecaborate-conjugated 4-(p-iodophenyl)butyric acid(PBC-IP)の分子デザインと細胞内取り込みの概要
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書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2023.06.022

【書誌情報】
Kai Nishimura, Hideki Kashiwagi, Taiki Morita, Yusuke Fukuo, Satoshi Okada, Kazuki Miura, Yoshitaka Matsumoto, Yu Sugawara, Takayuki Enomoto, Minoru Suzuki, Kei Nakai, Shinji Kawabata, Hiroyuki Nakamura (2023). Efficient neutron capture therapy of glioblastoma with pteroyl-closo-dodecaborate-conjugated 4-(p-iodophenyl)butyric acid (PBC-IP). Journal of Controlled Release, 360, 249-259.