細胞非自律的な植物の概日リズムの発見―細胞の持つ概日時計に従わない概日リズム―

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 概日時計は、花の開花を受粉に適した時間にするなど、植物のさまざまな生理学的プロセスの時間的調節に関与しています。概日時計は一つひとつの細胞の中にあり、個々の細胞が持つ時計の挙動は不安定です。ですが、植物のような多細胞生物は、個体レベルでは1日のリズムを調和的に生み出しています。なぜ、個体レベルで調和的なリズムを形成できるのでしょうか。この仕組みについては不明な点が多くあります。

 小山時隆 理学研究科准教授の研究グループは、人為的な生物発光技術を使って、単一細胞由来の2つの異なる概日リズムを調べました。その結果、一つひとつの細胞の中にも、単一細胞レベルで自律的な概日リズムと、その自律的なリズムとは異なる概日リズムがあることを世界で初めて明確に示すことができました。細胞内に自律的なリズムとは異なるリズムがあることは、植物の個体レベルで調和的な時間制御を可能にする要因の一つと考えられます。この調和的な概日リズムを形成するメカニズムを今後解き明かすことで、植物の1日の時間の使い方についてその全体像を明らかにできると期待されます。

 本研究成果は、2023年4月12日に、国際学術誌「Plant Physiology」にオンライン掲載されました。

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植物個体の細胞が形成する2種類の概日リズム
研究者のコメント

「植物がもつ『時間』に関する今回の成果は基礎的な研究から生まれましたが、研究材料であるウキクサ植物は産業応用面でも注目されて、近年様々な研究に使われています。基礎研究であっても応用研究であっても、『時間』抜きには生き物を語ることはできません。『生き物の時間の秘密』を感じながら、これからも面白い研究を進めていきたいと思っています。」(小山時隆)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1093/plphys/kiad218

【書誌情報】
Emiri Watanabe, Tomoaki Muranaka, Shunji Nakamura, Minako Isoda, Yu Horikawa, Tsuyoshi Aiso, Shogo Ito, Tokitaka Oyama (2023). A non-cell-autonomous circadian rhythm of bioluminescence reporter activities in individual duckweed cells. Plant Physiology, 193(1), 677-688.