漢字の手書きは文章力の発達に独自の貢献をする―読み書き発達の二重経路モデルの提唱―

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 大塚貞男 医学研究科特定助教、村井俊哉 同教授の研究グループは、公益財団法人日本漢字能力検定協会が実施している日本漢字能力検定(漢検)と文章読解・作成能力検定(文章検)の両方を受けた中高生の受検データを解析し、漢字の手書き習得が文章力の発達に独自の貢献をすることを明らかにしました。

 本研究では、漢字(読字、書字、意味理解)と文章(読解、作成)という2つの水準の読み書き能力の構造的関係性を調べました。その結果、漢字の書字の力が文章作成能力に影響していること、そして、漢字の意味理解の力は文章読解力に影響することで間接的に文章作成に寄与するが、書字の力がもつ直接的な影響力を代替することはできないことが明らかになりました。本研究で提唱された読み書き発達の二重経路モデルは、早期のデジタルデバイスの利用が子どもの漢字の手書き習得に抑制的な影響を及ぼした場合、その影響が文章力の発達にまで及ぶ可能性を示すものです。本研究の知見は、手書きに基づく読み書き教育を今後も続けていくことが、これからの世代の高度な言語能力の発達のために有益であることを示唆しています。

 本研究成果は、2023年4月24日に、国際学術誌「Reading and Writing」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント

「手書きからデジタルライティング(タイピング、フリック入力など)への転換は、人間の心や脳に少なからず影響を及ぼすと考えられ、その影響を明らかにすることは心理学研究の重要な課題だと言えます。この研究では、漢字の手書き習得が文章力の発達に独自の貢献をするという科学的証拠を提供し、手書きができなくなることが言語・認知能力に広く影響を及ぼす可能性を示しました。教育や医療の実践、個人と社会のウェルビーイングの向上に寄与することを目指して、今後も研究を前進させていきたいと思います。」

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1007/s11145-023-10433-3

【書誌情報】
Sadao Otsuka, Toshiya Murai (2023). The unique contribution of handwriting accuracy to literacy skills in Japanese adolescents. Reading and Writing.