人間の視覚注意解析のための人工知能(AI)技術の開発に成功

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 人間には「視覚注意」という機能があります。何かを目にしたときに人間は網膜を通して膨大な情報を得るので、それを効率よく処理するために働く機能です。この視覚注意には、まぶしさのような特徴的な視覚刺激そのものにより受動的に引き起こされるボトムアップ型注意と、探し物のような課題などにより能動的に生じるトップダウン型注意がありますが、これら二種類の注意は神経活動上で重なっているため、分離して解析することが困難であるとされてきました。

 今回、藤本啓介 情報学研究科修士課程学生、石井信 同教授らの研究グループは、このようなトップダウン型・ボトムアップ型視覚注意を独立に解析するために、画像を見た時に誘発されるボトムアップ注意を維持しながら、実際に撮影された自然な画像を人工的に生成された自然でない画像(非自然画像)に変換する人工知能(AI)技術を開発しました。実際に、この技術を用いて生成した非自然画像を見ている時、人間の視覚注意に関わる脳部位で、自然画像を見ている時とは異なる脳活動が生じていることが確認されました。

 本研究で開発した画像変換技術により、人間のトップダウン型とボトムアップ型視覚注意を分離し、それぞれのメカニズムをより詳細に解析することが可能になると考えられます。それにより、異なる視覚注意の特性を活かした新たな危機管理システムや脳と機械を媒介するブレイン・マシン・インタフェース技術の開発につながることが期待されます。

 本研究成果は、2022年8月23日に、国際学術誌「Neural Networks」にオンライン掲載されました。

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イメージ図:「自然な画像」から、人間が目を惹かれる部分をそのままに「自然でない」画像へ変換する研究。見ている人間は、それぞれの画像の同じ部分に目を惹かれるが、それぞれの画像で異なる脳活動が生み出される。
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.neunet.2022.08.015

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/276422

【書誌情報】
Keisuke Fujimoto, Kojiro Hayashi, Risa Katayama, Sehyung Lee, Zhen Liang, Wako Yoshida, Shin Ishii (2022). Deep learning-based image deconstruction method with maintained saliency. Neural Networks, 155, 224-241.

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