井上正宏 医学研究科特定教授、三善英知 大阪大学教授と森脇健太 東邦大学准教授らのグループは、腫瘍免疫監視機構の一翼を担う分子であるTRAIL (Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand)によるがん細胞死を制御する糖鎖構造を発見し、その糖鎖構造が、TRAIL受容体が関わるがん治療の効果を予測する因子となり得ることを示しました。これにより、TRAIL受容体分子標的治療やがん免疫療法の治療効果を予測する手法の開発につながることが期待されます。
この研究は、がん細胞表面の糖脂質に付加されるルイス糖鎖という糖鎖構造が、TRAIL誘導性細胞死を促進させることを明らかとし、ルイス糖鎖の量を測定することでがん細胞のTRAIL誘導性細胞死への感受性を予測できる可能性を示した初めての研究です。これにより、TRAIL受容体分子標的薬、またさらにがん免疫療法の治療効果の予測とその予測に基づいた新たながん治療戦略の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2022年8月15日に、雑誌「Oncogene」に掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41388-022-02434-3
【書誌事項】
Tomoya Fukuoka, Kenta Moriwaki, Shinji Takamatsu, Jumpei Kondo, Miki Tanaka-Okamoto, Azusa Tomioka, Manami Semba, Sachiko Komazawa-Sakon, Yoshihiro Kamada, Hiroyuki Kaji, Yasuhide Miyamoto, Masahiro Inoue, Kazuhiko Bessho, Yoko Miyoshi, Keiichi Ozono, Hiroyasu Nakano, Eiji Miyoshi (2022). Lewis glycosphingolipids as critical determinants of TRAIL sensitivity in cancer cells. Oncogene, 41(38), 4385–4396.