うつ病の世界的負担を軽減するために一致団結した行動を -世界的医学雑誌ランセットが特集号-

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 古川壽亮 医学研究科教授は、神経科学からグローバルヘルスまで含む幅広い分野の世界11カ国25人の専門家とともに、うつ病の世界的負担を軽減するために一致団結した行動を呼びかける以下の宣言をまとめあげました。

 本研究成果は、2022年2月16日に、国際学術誌「Lancet」に掲載されました。

  • 全世界の成人の5%が毎年うつ病に罹患していると推定されていますが、依然として軽視されている世界的な健康危機であり、とくに若年層での発症が最も多くなっています。
  • この疾患に対する理解の低さ、心理社会的・経済的資源の不足が、予防、診断、治療、そして各国の経済的繁栄に影響を及ぼしています。
  • Lancet-世界精神医学会委員会は、診断、治療、予防における不公平や広範な無視に取り組むため、革新的な段階的ケアと早期介入を優先し、資源の乏しい環境などにおいて共同ケアを提供するなど、意欲的な勧告を概説しています。
  • 専門家は、心臓病や癌などの他の分野と同様の効果を得るために、社会全体でうつ病予防に取り組み、国連の持続可能な開発目標の全体的な追求を確実にすることを呼びかけています。Lancet誌と世界精神医学会のうつ病に関する委員会は、うつ病の世界的な負担を軽減するための社会全体の対応を求めており、世界が直面しているうつ病の持続的かつますます深刻な世界的危機に対処できていないとしています。
  • 資源に乏しい環境であっても、うつ病を予防し、回復を助けるために多くのことができるという多くの証拠があるにもかかわらず、どの年においても、世界中の成人人口の5%がうつ病と共存していると推定されます。高所得国でも、うつ病に苦しむ人々の約半数が診断も治療も受けておらず、低・中所得国では80-90%にも上ります。
  • COVID-19の大流行は、社会的孤立、死別、不確実性、苦難、医療への限られたアクセスなど、さらなる課題を生み出し、何百万もの人々の精神衛生に深刻な打撃を与えています。
  • このような背景から、委員会は「うつ病に対して世界が一致団結して行動するときが来た」と呼びかけ、政府、医療従事者、研究者、うつ病患者やその家族による協調的・協力的努力を求め、ケアと予防の改善、知識のギャップの解消、認知度の向上により、回避できる苦痛と早すぎる死の主要原因の1つに世界で取り組んでいくことを宣言しています。
本宣言の概要図
図:うつ病による負担を減らすためには、さまざまなステークホルダーによる一致団結した行動が必要である
研究者情報
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02141-3

Helen Herrman, Vikram Patel, Christian Kieling, Michael Berk, Claudia Buchweitz, Pim Cuijpers, Toshiaki A Furukawa, Ronald C Kessler, Brandon A Kohrt, Mario Maj, Patrick McGorry, Charles F Reynolds, Myrna M Weissman, Dixon Chibanda, Christopher Dowrick, Louise M Howard, Christina W Hoven, Martin Knapp, Helen S Mayberg, Brenda W J H Penninx, Shuiyuan Xiao, Madhukar Trivedi, Rudolf Uher, Lakshmi Vijayakumar, Miranda Wolpert (2022). Time for united action on depression: a Lancet–World Psychiatric Association Commission. The Lancet, 399(10328), 957-1022.