宇野裕美 生態学研究センター特定准教授 (現・北海道大学・日本学術振興会特別研究員)、福島慶太郎 同研究員 、倉澤央 同修士課程学生、佐藤拓哉 同准教授、河村真理子 フィールド科学教育研究センター研究員らは、紀伊半島南部の河川において野外調査や野外操作実験を行い、海から遡上してくる小エビが河川生態系を大きく改変することを示しました。
海と川のつながりが残る自然生態系では、多くの生物が海と川の間を回遊しています。回遊というとサケやウナギが有名ですが、紀伊半島をはじめとする日本南部の河川にはハゼ類、巻貝類、および甲殻類など両側回遊というタイプの回遊をする小さな生物がとても多く生息しています。今回本研究グループは特に山地河川に多く見られるヌマエビやヤマトヌマエビなどの小型エビ類が河川において果たす役割を明らかにすることを目的に、小型エビ類の有無が河川生態系の他の生物や環境に与える影響を調べました。小型エビ類がいる河川といない河川で実際の生態系を比較し、一つの河川の中で小型エビ類がいる部分といない部分を実験的に作り出して他の生物の応答を調べました。結果、エビがいると川底の生物相が変わり、川底を覆う細かな有機物が減少し、栄養塩動態も変化し、河川水中の栄養塩濃度にまで影響が及ぶ可能性が示唆されました。川の環境は流域の陸上生態系の状態だけでなく、海とのつながりにも大きな影響を及ぼすことが示されました。
本研究成果は、 2022年2月14日に、国際学術誌「Oecologia」にオンライン掲載されました。
【DOI】https://doi.org/10.1007/s00442-022-05119-6
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/268235
Hiromi Uno, Keitaro Fukushima, Mariko Kawamura, Akira Kurasawa & Takuya Sato (2022). Direct and indirect effects of amphidromous shrimps on nutrient mineralization in streams in Japan. Oecologia, 198(2), 493-505.