小田裕香子 ウイルス・再生医科学研究所助教、豊島文子 同教授らの研究グループは、マウス上皮組織由来の分泌液中に上皮バリア形成を誘導する液性因子が存在することを見出し、新規生理活性ペプチドを同定しました。
上皮のバリア機能は、タイトジャンクション(TJ)と呼ばれる細胞間接着装置によって担われます。 TJは生体内におけるバリア機能に必須の役割を果たしており、その分子構築については精力的に研究が行われてきました。一方で、TJがどのようにして形成されるかについてはほとんど不明でした。本研究では、マウスの組織分泌液中に存在するTJ形成活性をもつ物質として、新規ペプチドJIP(Junction inducing peptide)を同定しました。また、JIPは、Gタンパク質G13を直接活性化することで、アクチン骨格を再編成し、TJの形成を誘導することを見出しました。さらに、JIPは、炎症回復時に発現が増加し、上皮組織の修復に貢献することを明らかにしました。JIPは、炎症などバリア破綻が密接に関わる病態に対する創薬シーズとして期待されます。
本研究成果は、2021年11月17日に、国際学術誌「Science Advances」に掲載されました。
【DOI】https://doi.org/10.1126/sciadv.abj6895
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/266092
Yukako Oda, Chisato Takahashi, Shota Harada, Shun Nakamura, Daxiao Sun, Kazumi Kiso, Yuko Urata, Hitoshi Miyachi, Yoshinori Fujiyoshi, Alf Honigmann, Seiichi Uchida, Yasushi Ishihama, Fumiko Toyoshima (2021). Discovery of anti-inflammatory physiological peptides that promote tissue repair by reinforcing epithelial barrier formation. Science Advances, 7(47):eabj6895.