積山薫 総合生存学館教授、久永聡子 熊本大学研究員、麦谷綾子 日本女子大学准教授らの研究グループは、 日本の乳幼児の視線計測をおこない、「日本人は話者の目を見て、英語母語者は口を見る」という大人で報告されていた文化・言語差が幼少期から存在することを見出しました。
私たちは人の話し声を聞くとき、話者の顔からの視覚情報も利用しています。ただ、そこには文化・言語による程度の違いもあり、日本語母語者は英語母語者ほど視覚情報を利用せず、また話者を見る際も英語母語者ほど口への視線の集中がないことが成人で報告されていました。
今回、生後6か月から3歳までの日本の乳幼児120人に話者の発話を視聴覚提示して視線計測した結果、発達的な初期状態である目の選好が減少し始めるのが英語圏の乳幼児データに比べて遅く、減少の程度も緩やかでした。しかも、3歳になると英語圏とは異なり目の選好が回復し、しゃべる語彙の多い子ほど目をよく見ていました。これらのことは、成人で報告されていた文化・言語差の起源であると考えられます。
本研究成果は、2021年5月12日に、国際学術誌「Cortex」のオンライン版に掲載されました。
【DOI】https://doi.org/10.1016/j.cortex.2021.03.023
Kaoru Sekiyama, Satoko Hisanaga, Ryoko Mugitani (2021). Selective attention to the mouth of a talker in Japanese-learning infants and toddlers: Its relationship with vocabulary and compensation for noise. Cortex, 140, 145-156.
朝日新聞(6月7日夕刊 3面)に掲載されました。