伊達洋至 医学研究科教授は、武部貴則 東京医科歯科大学教授らの研究グループ、芳川豊史 名古屋大学教授と共同で、重篤な呼吸不全に対して、腸換気法が有効であることをつきとめました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連重症呼吸器合併症においても認められる低酸素血症を伴う呼吸不全に対し、生命維持を目的として人工呼吸器や人工肺(ECMO)による集中治療が行われています。しかし、これらの医療機器は、高度な専門性と莫大な費用が必要とされることに加え、治療に伴う身体への負担や侵襲が大きいことが課題とされていました。そのため、従来治療の負担を軽減するため、新たな呼吸管理法の開発が待望されていました。
本研究グループは、腸に酸素を供給するというアプローチにより、全身の酸素化を可能とする腸換気(Enteral Ventilation:EVA)法を開発しました。EVA法は、呼吸不全モデル動物の生命予後を改善できることを明らかにしました。また、EVA法はモデル動物の検討において明らかな有害事象は認められないことを示しました。これらの成果は、呼吸不全に対する新しい呼吸管理法の開発に貢献すると考えられます。
本研究成果は、2021年5月15日に、国際学術誌「Med」のオンライン版に掲載されました。
【DOI】https://doi.org/10.1016/j.medj.2021.04.004
Ryo Okabe, Toyofumi F. Chen-Yoshikawa, Yosuke Yoneyama, Yuhei Yokoyama, Satona Tanaka, Akihiko Yoshizawa, Wendy L. Thompson, Gokul Kannan, Eiji Kobayashi, Hiroshi Date, Takanori Takebe (2021). Mammalian enteral ventilation ameliorates respiratory failure. Med, 2(6), 773-783:e5.