酸化ストレスが細胞の核膜機能を変える機構を解明 -環境に応じて分子の「混み具合」が変わる仕組み-

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 Wanzhen Zhang 生命科学研究科博士課程学生、粂田昌宏 同助教、吉村成弘 同准教授らの研究グループは、環境の酸化・還元状態の変化により、細胞の核膜に存在する分子輸送チャンネル「核膜孔複合体」内部の分子密度が変化し、輸送が制御される機構を明らかにしました。

 細胞内で、いろいろな外的刺激を感知する場である細胞質と、遺伝子を収納し生命機能の司令塔となる細胞核は、核膜に空いた穴「核膜孔複合体」を介して物質のやりとりをすることでコミュニケーションしています。この核膜孔複合体には、その内部に分子が非常に「混み合った」ゲル状の分子夾雑バリアが形成されていて、適切に特定の物質だけを通す「選択的輸送」を可能にしています。

 本研究は、この核膜孔の中の「混み具合」を生きた細胞の中で測定する蛍光分子プローブGimRETや、0.01秒程度の分子通過を一分子レベルで追跡する顕微鏡システムなどを用いて、酸化還元状態の変化によって核膜孔複合体の性質が変化することを明らかにしました。このことから、細胞には環境の変化に応じて分子の「混み具合」をコントロールする機構が存在することがわかりました。今後、分子の「混み具合」の視点から、細胞内のさまざまな構造体の形成および維持の仕組みの根本的理解や、ストレス応答の仕組みの解明などにつながることが期待されます。

 本研究成果は、2020年12月16日に、国際学術誌「Cell Reports」に掲載されました。

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図:本研究のイメージ図
書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.celrep.2020.108484

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/259818

Wanzhen Zhang, Ryuji Watanabe, Hide A. Konishi, Takahiro Fujiwara, Shige H. Yoshimura, Masahiro Kumeta (2020). Redox-Sensitive Cysteines Confer Proximal Control of the Molecular Crowding Barrier in the Nuclear Pore. Cell Reports, 33(11):108484.

メディア掲載情報

日刊工業新聞(12月16日 23面)に掲載されました。

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