生体腎におけるエネルギー動態イメージング法の確立 -近位尿細管のエネルギー代謝が腎予後を決定する-

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柳⽥素⼦ 医学研究科教授(兼・⾼等研究院ヒト⽣物学⾼等研究拠点(ASHBi)主任研究者)、⼭本正道 同准教授、⼭本伸也 同医員らの研究グループは、近位尿細管は極めてアデノシン三リン酸(ATP)要求性が⾼いことから、「近位尿細管におけるエネルギー動態が、腎予後を決定する」という仮説を⽴て、 細胞内ATP濃度を可視化するFRETバイオセンサーを全⾝発現させたATP可視化マウスを作成し、世界で初めて、⽣体腎の時間的・空間的ATP 動態を⾼精度かつリアルタイムに捉えることに成功しました。

そして、急性腎障害において近位尿細管のATP濃度が⼀過性に低下すること、近位尿細管におけるATPの回復度が⻑期的な腎予後を決定することを明らかにしました。また、低温条件下ではATPの回復度および腎予後が改善することを証明し、移植腎の保管などに⽤いられる低温療法の理論的根拠を⾒出しました。

本研究グループは、腎臓の「近位尿細管」の障害が急性腎障害から末期腎不全まで、さまざまな病態を惹起することを報告してきましたが、その予後を決めるメカニズムについては不明でした。

本知⾒は、腎臓内のATP変動で⽰されるエネルギー代謝の恒常性破綻が腎予後と密接に関連することを⽰しており、腎臓病の治療介⼊の可能性を拓くものです。

本研究成果は、2020年10月13日に、国際学術誌「Journal of the American Society of Nephrology」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1681/ASN.2020050580

Shinya Yamamoto, Masamichi Yamamoto, Jin Nakamura, Akiko Mii, Shigenori Yamamoto, Masahiro Takahashi, Keiichi Kaneko, Eiichiro Uchino, Yuki Sato, Shingo Fukuma, Hiromi Imamura, Michiyuki Matsuda and Motoko Yanagita (2020). Spatiotemporal ATP Dynamics during AKI Predict Renal Prognosis. Journal of the American Society of Nephrology, 31(12), 2855-2869.

メディア掲載情報

日本経済新聞(11月23日 9面)に掲載されました。