日本から産出したヒメウミスズメ類化石を確認 -太平洋中緯度地域の「大西洋型」海鳥-

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渡辺順也 理学研究科教務補佐員(現・英国ケンブリッジ大学Newton International Fellow)、松岡廣繁 同助教らの研究グループは、千葉県から産出した化石について分類的位置づけを検討したところ、海鳥ヒメウミスズメ(学名 Alle alle )に近縁と思われる化石を新たに確認しました。

生物の過去の分布を復元するためには、化石記録から得られる情報が不可欠ですが、日本を含む太平洋西岸域では海鳥の化石記録は乏しく、海鳥の分布の変遷を議論する材料はほとんどありませんでした。本研究グループは、この空白を埋めるべく、日本産の更新世(約260万~1万年前の地質時代)の海鳥化石の研究を行ってきました。

ヒメウミスズメは現在ではほぼ大西洋と北極海にのみ分布しており、日本などの太平洋沿岸の中緯度域では極めてまれにしか見られません。今回の化石の産出は、かつてこの仲間が日本近海にも比較的普通に生息していた可能性を強く示唆しています。したがって、ヒメウミスズメ類は化石の時代(約70万年前)から現在までの間に太平洋における分布を縮小したことになります。ヒメウミスズメが現在大西洋で最も繁栄している海鳥であることを考えると、この仲間が太平洋で分布を縮小したことは奇妙でさえあります。このような分布の縮小が起こった原因は現時点では不明であり、今後のさらなる化石の発見と研究の発展が待たれます。

本研究成果は、2020年1月21日に、国際学術誌「Journal of Vertebrate Paleontology」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図(ヒメウミスズメの写真提供:Justine Ammendolia氏)

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1080/02724634.2019.1697277

Junya Watanabe, Akihiro Koizumi, Ryohei Nakagawa, Keiichi Takahashi, Takeshi Tanaka & Hiroshige Matsuoka (2019). Seabirds (Aves) from the Pleistocene Kazusa and Shimosa groups, central Japan. Journal of Vertebrate Paleontology, 39(5), e1697277.