藤森真一郎 工学研究科准教授、高倉潤也 国立環境研究所研究員、田村誠 茨城大学准教授、平林由希子 芝浦工業大学教授、本田靖 筑波大学教授、沖大幹 東京大学教授、飯泉仁之直 農研機構主任研究員、長谷川知子 立命館大学准教授らの研究グループは、パリ協定で定めた2℃目標を含む複数の異なる温室効果ガス排出の将来見通し、並びに異なる人口やGDPといった社会経済の将来状況の仮定の下での大規模なシミュレーションを実施し、地球温暖化によって生じる経済的な被害額の推計しました。
本研究によって、最も悲観的な将来の仮定の下では、21世紀末における地球温暖化による被害額は世界全体のGDPの3.9~8.6%に相当すると推計された一方、パリ協定の2℃目標を達成し、かつ、地域間の経済的な格差等が改善された場合には被害額は世界全体のGDPの0.4~1.2%に抑えられるという推計結果が得られました。また、特に開発途上国においては社会経済状況の改善が被害額(対GDP比)を小さく抑える効果があることもわかりました。
本研究成果は、温室効果ガスの排出削減等の地球温暖化対策の取り方や社会経済状況の変化といった、人類が選択しうる要因が将来の地球温暖化によって生じる被害の大きさに対して、大きな影響力を持つことを示唆しています。
本研究成果は、2019年9月26日に、国際学術誌「Nature Climate Change」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41558-019-0578-6
Jun’ya Takakura, Shinichiro Fujimori, Naota Hanasaki, Tomoko Hasegawa, Yukiko Hirabayashi, Yasushi Honda, Toshichika Iizumi, Naoko Kumano, Chan Park, Zhihong Shen, Kiyoshi Takahashi, Makoto Tamura, Masahiro Tanoue, Koujiro Tsuchida, Hiromune Yokoki, Qian Zhou, Taikan Oki & Yasuaki Hijioka (2019). Dependence of economic impacts of climate change on anthropogenically directed pathways. Nature Climate Change, 9, 737–741.
- 日刊工業新聞(10月4日 25面)に掲載されました。