紀州南高梅の染色体レベルでの高精度ゲノム解読―気候温暖化適応型品種改良に貢献―

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 山根久代 農学研究科准教授、向子帆 同特定助教、Yuan-Jui Lin 同修士過程学生(研究当時)、西山総一郎 同助教、田尾龍太郎 同教授らの研究グループは、高級梅干し・梅酒ブランド「紀州南高梅」としても知られるウメ「南高」のゲノムを、ハプロタイプレベルで解読することに成功しました。  

 本研究グループは、気候変動による収量不安定化の主な要因となっている開花や発芽の温度応答性形質について、それらを決定する遺伝領域を同定し育種の高度化をはかることを目的に、「南高」のゲノム解読とQTL解析を行いました。最新ロングリードシークエンス技術による塩基配列解読とアッセンブル技術を用いることで、8本×2組=合計16本の染色体から構成される合計478.7Mbの配列データを明らかにしました。さらに、「南高」がもつ第4染色体の2つのハプロタイプの1つに生じた5.6Mbの染色体逆位が発芽期の多様化に寄与する可能性を明らかにしました。

 本研究成果は、「南高」だけでなく日本に分布する他のウメ品種群の参照ゲノムとして広く利用され、今後の気候温暖化適応型ウメ育種の効率化に貢献することが期待されます。

 本研究成果は、2024年12月4日に、国際学術誌「DNA Research」にオンライン掲載されました。

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解読した「南高」ゲノム(左)、「南高」の開花の様子(右上)、結実の様子(右下)
研究者のコメント
「日本の重要なウメ品種である『南高』ゲノムをハプロタイプレベルで高精度に解読できたことを大変うれしく思っています。現在、技術進展とともに、様々な作物種で次々にゲノム解読が進んでいます。本研究を契機にウメの研究・品種改良を加速化できればと考えています。」(山根久代)

「台湾に由来するウメの遺伝資源を活用することにより、本研究では発芽の多様性について新たな知見を得ることができました。台湾出身で日本で研究を行っている研究者として、日台の遺伝資源を融合させた本プロジェクトに参加できたことは、大変意義深いものです。」(向子帆)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1093/dnares/dsae034

【書誌情報】
Tzu-Fan Hsiang, Hisayo Yamane, Yuan-Jui Lin, Miku Sugimori, Soichiro Nishiyama, Kyoka Nagasaka, Ryohei Nakano, Ryutaro Tao (2024). The haplotype-phased genome assembly facilitated the deciphering of the bud dormancy-related QTLs in Prunus mume. DNA Research, dsae034.