シカの増加が川の魚の個体数に影響することを示唆 -長期観察から見えてきた森と川の意外なつながり-

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中川光 東南アジア地域研究研究所特定助教は、ニホンジカの過剰な摂食による森林環境の変化が、川の魚の個体数の増加・減少にも影響を及ぼしている可能性があることを、芦生研究林において11年間継続してきた魚類と生息環境の観察によって示しました。

本研究では、シカによる大規模な林床植物の食べ尽くしがおこっている芦生研究林内の由良川において、2007年5月から2018年6月にかけて、シュノーケリングによる魚類の個体数のカウントと環境の測定を行いました。

その結果、調査地の川では森から流れ込んだ土砂が堆積して砂に覆われた川底が増える一方で、大きな石に覆われた川底は減少していました。そして、この環境の変化に対応して、魚類では大きな礫(れき)を好むウグイという種が個体数を減らした一方で、砂地を好むカマツカという種が増加する傾向が観察されました。

本結果は、現在日本だけでなく世界中で問題になっているシカの個体数の増加の影響が、森林だけでなく、河川の環境や生き物たちにまで拡がる可能性があることを実際の観察データをもとに示した貴重な研究と言えます。

本研究成果は、2019年6月7日に、国際学術誌「Conservation Science and Practice」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1111/csp2.71

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/241717

Hikaru Nakagawa (2019). Habitat changes and population dynamics of fishes in a stream with forest floor degradation due to deer overconsumption in its catchment area. Conservation Science and Practice, e71.