東樹宏和 生態学研究センター准教授、黒川紘子 森林総合研究所主任研究員、田中健太 筑波大学准教授らの研究グループは、植物の種多様性が極めて高い長野県菅平高原において137種の植物を網羅的に調査し、その葉や根に膨大な種類の細菌(バクテリア)と真菌(かび・きのこ・酵母類)が共生していることを見出しました。
現在、日本各地で急速に草原が失われつつあります。その一方で、草原生態系に関する人類の知識はまだ乏しく、草原が私たちに与えてくれる潜在的な機能やサービスに関して未解明な点が多々残されています。
本研究グループは、植物の葉や根に共生する微生物の集まり(微生物叢)を網羅的に分析するため、「DNAメタバーコーディング」という手法を適用しました。本研究の結果、日本列島でわずかな面積しか残されていない草原生態系に無数の微生物が息づき、人類社会存続の要とも言える創薬や持続可能型農林業への応用が期待される微生物が数多く含まれることが判明しました。137種の植物種ごとに示された微生物叢のデータは、それぞれの植物種を保全する意義の客観的評価につながると期待されます。
本研究成果は、2019年2月20日に国際学術誌「Frontiers in Microbiology」にオンライン掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.3389/fmicb.2019.00241
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/236488
Hirokazu Toju, Hiroko Kurokawa and Tanaka Kenta (2019). Factors Influencing Leaf- and Root-Associated Communities of Bacteria and Fungi Across 33 Plant Orders in a Grassland. Frontiers in Microbiology, 10:241.