呉羽真 学際融合教育研究推進センター宇宙総合学研究ユニット特定研究員、伊勢田哲治 文学研究科准教授、磯部洋明 総合生存学館准教授らの研究グループは、「将来の宇宙探査・開発・利用がもつ倫理的・法的・社会的含意に関する研究調査報告書」を2018年2月23日に発行しました。これは、現在提案されている国際有人宇宙探査計画に関わる問題や、宇宙資源開発や宇宙旅行を含む民間宇宙ビジネスに関わる問題、宇宙技術のデュアルユースの問題など、今後の宇宙活動に伴う諸課題を取り上げ、多様な専門分野の知見に基づいて考察を加えたものです。本プロジェクトは、科学技術の「倫理的・法的・社会的含意(ELSI:ethical, legal, and social implications)」に関する研究の中で、宇宙活動をテーマにした専門的・網羅的な学術研究としては、世界初の取り組みです。
研究者からのコメント
本報告書の根底にあるメッセージは、宇宙活動の進め方についてみんなで考えよう、というものです。宇宙進出が本格化しつつある今、報告書に述べた影響や課題について一般市民を含む人々がしっかり考え、話し合うことが、今後宇宙活動が社会と共生関係を保ちながら発展していくために重要だと私たちは考えています。
概要
今大きな転換点を迎えている宇宙活動は、様々な倫理的・法的・社会的課題を生みだしつつあり、これらの課題に対処するには、一般市民を含む多様な人々が公共的な議論を行っていくことが必要です。しかし、こうした議論の土台となるべき学術的な研究調査は、これまで存在しませんでした。
そこで本研究グループは、宇宙活動に関するELSIの研究調査を行い、報告書を執筆しました。ELSIとは、科学技術の発展に伴って生じうる影響や課題を社会実装に先立って特定し、対応を検討する取り組みです。報告書では、宇宙活動の様々な事業、様々なアクターとステークホルダー、そして様々なメリットやデメリットおよびその他の影響を整理するとともに、重要な個別トピックについて専門的考察を加えています。扱うトピックは、「宇宙探査への公的投資の問題」、「有人宇宙探査に伴う人的リスクの問題」、「宇宙資源の開発・利用をめぐる問題」、「宇宙技術のデュアルユースの問題」、「民間宇宙ビジネスの参入に伴う問題」の5つです。各トピックに関して、多様な専門分野の知見に基づき、現在の状況や今後予想されるシナリオ、そして社会が向き合っていかなければならない検討事項を簡潔にまとめています。
詳しい研究内容について
- 将来の宇宙活動に伴う倫理的・法的・社会的影響と課題を解明 -学際的研究グループによる世界初の専門的・網羅的な報告書の発行-
- 京都新聞(2月23日 31面)、日本経済新聞(2月23日)および毎日新聞(2月28日 27面)に掲載されました。