梶誠兒 医学研究科博士課程学生、眞木崇州 医学部附属病院助教、高橋良輔 医学研究科教授らの研究グループは、株式会社カン研究所、滋賀医科大学、東京都医学総合研究所、Johns Hopkins大学と共同で、神経難病である多系統萎縮症の原因物質と考えられるα-シヌクレインが脳オリゴデンドロサイト(以下OLG)細胞に蓄積するメカニズムとして、オリゴデンドロサイト前駆細胞(以下OPC)という細胞が関与している可能性を発見しました。さらに実験を通じて多系統萎縮症に見られる異常なOLG細胞と似た細胞を作り出すことができたことから、細胞単位での疾患モデルとして病態解明や治療薬発見につながる可能性があると考えられます。
本研究成果は、2018年1月12日午前2時にCell Press社の学術誌「Stem Cell Reports」にオンラインで掲載されました。
研究者からのコメント
これらの細胞実験から得た病的なOLG細胞に様々な候補薬剤を投与し、その効果を検証することによってこれまで全く治療薬の無かった多系統萎縮症の治療薬発見に結び付くと考えています。今後は候補薬剤の検証を行っていく一方で、多系統萎縮症の細胞病態を再現する上でより再現性の高い細胞モデルを樹立することも目指していく予定です。
概要
多系統萎縮症は歩行障害や自律神経障害から発症し、診断からの予後が6~7年とされる神経難病で有効な治療法はありません。発症原因は不明ですが、脳で神経細胞を助ける働きをもつOLG細胞に異常構造化したα-シヌクレインというたんぱく質が溜まることが知られています。もともと神経細胞に多く存在するはずの正常なα-シヌクレインが、どのようにOLG細胞に蓄積するのかは明らかになっていません。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2017.12.001
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/228877
Seiji Kaji, Takakuni Maki, Hisanori Kinoshita, Norihito Uemura, Takashi Ayaki, Yasuhiro Kawamoto, Takahiro Furuta, Makoto Urushitani, Masato Hasegawa, Yusuke Kinoshita, Yuichi Ono, Xiaobo Mao, Tran H. Quach, Kazuhiro Iwai, Valina L. Dawson, Ted M. Dawson, Ryosuke Takahashi (2018). Pathological Endogenous α-Synuclein Accumulation in Oligodendrocyte Precursor Cells Potentially Induces Inclusions in Multiple System Atrophy. Stem Cell Reports, 10(2), 356-365.
- 京都新聞(1月12日 25面)に掲載されました。