書家垂涎の古拓発見 -松本文三郎旧蔵・龍門二十品拓本-

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岡村秀典 人文科学研究所教授、安岡孝一 同教授、稲本泰生 同准教授、安岡素子 同研究員らの研究グループは、未整理の中国歴代の碑刻拓本の中から「龍門二十品」と呼ばれる古い拓本を発見しました。本研究所には十数セットの「龍門二十品」が所蔵されていますが、今回発見した拓本は、その中で最も古いものです。

研究者からのコメント

左から、岡村教授、安岡教授、稲本准教授

今回の発見からもわかる通り、本研究所には未整理の拓本がまだ数多く眠っています。漢字文化に関心のある方々に広く利用していただけるようウェブサイトなどで公開を進め、研究成果の発信に努めてまいります。また共同研究班「龍門北朝窟の造像と造像記」では研究所の蔵する造像記の拓本を活用し、石窟寺院研究のさらなる深化をめざします。

概要

「龍門二十品」とは、敦煌・雲岡と並ぶ中国三大石窟の一つとして名高い洛陽の龍門石窟において、北魏の太和十九年(495年)から神亀三年(520年)に彫られた文字20種のことで(現行の「龍門二十品」、松本旧蔵拓本は内訳が一部異なる)、南北朝(六朝)時代の「六朝楷書」を代表する書蹟として知られています。清朝の18世紀以来、その文字が書家の間で珍重され、繰り返し拓本が採られたため、原石はひどく傷んでしまいましたが、今回本研究グループが発見した拓本は、人文科学研究所の前身である東方文化研究所の所長であった松本文三郎博士が収集したもので、破損前の状態をとどめた最古級の拓本であることが判明しました。

本研究グループは、研究資料としての重要性に鑑み、今回発見した「龍門二十品」を原寸大に印刷して、稲本泰生・安岡素子編「松本文三郎旧蔵 龍門二十品拓本」東アジア人文情報学研究センター東方学資料叢刊第24冊として出版しました。書家や仏教史の専門家に供するだけでなく、広く一般の方々にも漢字の美しさや楽しさを味わっていただくため、約5,000点を収める拓本文字データベースにおいても公開の予定です。

この「龍門二十品」は書道の手本として書家垂涎の的であり、仏教芸術を考える上でも重要な文字資料となっています。破損の少ない最古級の拓本が発見されたことにより、これをもとにした研究の進展が期待されます。

図:解伯達造像記(「龍門二十品」の一つ)拓本

大意:解伯達(人名)が弥勒像一体を造った。願わくは皇帝の威光がますます輝き、その威徳が国外をも潤しますように。父母が元気で長生きし、さとりの世界に到達し、(自分の)官位も昇進しますように。すべての者が、仏を仰ぎみることができ、この願いが成就しますように。六道の生きとし生けるものが、この願いを同じくしますように。太和(477~499)の年に造る。

詳しい研究内容について