生物多様性を維持する新しい理論の提示 -密度に応じた資源配分が希少種の存続を許す-

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小林和也 フィールド科学教育研究センター講師は、植物の生物多様性維持には花粉と種子の生産バランスが重要な役割を果たしているとの新しい理論を発見しました。光や水といった光合成に必須の資源について、利用可能な量が種によって異なる状況を模したシミュレーションを用いて理論を検証したところ、実際のフィールドで観察される生物多様性をうまく再現できました。

本研究成果は、2017年3月6日午後7時に英国の総合学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

研究者からのコメント

この研究では性比と生物多様性の関係を明らかにしたとともに、密度依存的な種内競争の強度変化が群集全体のパターンに影響していること、その裏で「進化」が暗躍していることを示唆しています。また、この仮説は有性生殖を行うあらゆる生き物、つまり植物だけでなく、動物や昆虫の群集にも適応可能であるため、個々の種の進化と群集全体の動態がどのように関係しているのかを丁寧に調べていくことで、生物多様性の維持メカニズム解明に貢献できると考えています。

概要

地球上に見られる多種多様な生物がなぜ共存できるのかという問いは、生態学における重要な未解決問題の一つです。本研究では、多種共存が生じるメカニズムとして種子と花粉の生産比(性比)に着目しました。

性比の理論研究では、花粉が届く範囲に多数の同種他個体がいる場合には1対1の生産比になり、低密度の時には花粉の生産を抑えて種子を多く生産すると予測しています。この理論が正しいとすると、ある地域で種によって得られる資源の量が異なっていた場合、利用できる資源の多い種は高密度となって種子と花粉に等しく配分するのに対し、利用できる資源の少ない種は低密度となって資源の多くを種子生産に回すようになります。植物の増殖効率は種子生産量に強く依存しますが、花粉生産量には影響されないため、結果として種間で種子生産量が均一になることが期待されます。

そこで本研究では、この仮説を検証するためシミュレーションモデルを構築し、予想通り密度に応じた種子と花粉への資源配分が起こること、それによって種子生産量が種間で均一化し600種を超える多種共存が可能であることを示しました。さらに、このモデルで得られた結果は、実際の生物群集に見られる種数と個体数の関係とよく一致しました。

図:光を巡って競争している植物群集

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 http://doi.org/10.1038/srep43966

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/218743

Kazuya Kobayashi. (2017). Sex allocation promotes the stable co-occurrence of competitive species. Scientific Reports, 7:43966.