今井啓雄 霊長類研究所准教授、橋戸南美 同研究員らの研究グループは、インドネシアボゴール農科大学と共同で、霊長類の中のジャワルトンやテングザルなどのコロブス類が、苦味物質であるPTC(フェニルチオカルバミド)に対してほとんど苦味を感じないことを発見しました。
本研究成果は、2017年1月25日午前9時1分に英国王立協会の学術誌「Biology Letters」に掲載されました。
研究者からのコメント
今後、他の味覚受容体の解析も行うことにより、コロブス類の特徴的な食性のメカニズムに迫ることが期待されます。
概要
苦味感覚は本来、植物などが持つ毒物に対する防御機構として動物の味覚に備わっています。しかし、ヒトの例でもあるように、アブラナ科野菜や柑橘類に含まれる苦味物質に類似したPTCに対しては、苦味を感じる個体と感じない個体がいることが、さまざまな霊長類で分かってきました。ヒトやチンパンジー、ニホンザルなどのほとんどの霊長類は雑食性ですが、ジャワルトンやテングザルなどのコロブス類は葉食に特化した食性を示し、葉に特化する何らかの要因が推測されます。
そこで本研究グループは、コロブス類のPTCに対する反応を、行動実験と苦味受容体TAS2R38の機能解析から検討しました。
その結果、コロブス類はPTCに対してほとんど苦味を感じないことが分かりました。本研究成果は、葉食に特化したコロブス類では、苦味受容体が機能を失うことによって苦い葉でも食べられるようになることを示唆しています。
図:研究対象としたコロブス類
左:ジャワルトン(写真提供Kanthi Arum Widayati)、右:テングザル(写真提供Sarah Nila)
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 http://doi.org/10.1098/rsbl.2016.0834
Laurentia Henrieta Permita Sari Purba, Kanthi Arum Widayati, Kei Tsutsui, Nami Suzuki-Hashido, Takashi Hayakawa, Sarah Nila, Bambang Suryobroto, Hiroo Imai. (2017). Functional characterization of the TAS2R38 bitter taste receptor for phenylthiocarbamide in colobine monkeys. Biology Letters, 13(1), 20160834.